コラム

【最新号】望月優大さん長編ルポ――「日本に生きる『移民』のリアル」

2018年12月06日(木)17時00分

編集部にて、望月優大さん Satoko Kogure-Newsweek Japan

今週、ぜひ読んでいただきたい1本があります。

発売中のニューズウィーク日本版は、特集「移民の歌」。日本の移民事情について精力的に発信を続けている望月優大(ひろき)さんに、10ぺージのルポを寄稿していただきました。

半年前に海外支局から本帰国して以来、最も気になり、ずっと特集したかったのが、日本による外国人労働者受け入れ拡大問題でした。私も最近までアメリカで「移民」でしたし(国連などの国際機関の定義では、1年以上外国で暮らす人は「移民」だそうです)、この定義で言えばアメリカ含め他国で「移民」として生きている友人がたくさんいるし、国内にも外国人の友がいて、外国人の配偶者と家族をもって暮らしている友人もいます。

日本の「移民」問題はまったく他人事ではなく、今自分が暮らしているこの国が外国人に対してどういう態度をとるのか、また、日本で暮らしている外国人がこの国をどう思っているのか、とても気になっていました。

望月さんがこの問題について誠実に取り組んでらっしゃるのを遠くから見ていて、数か月前に連絡を差し上げ、編集長と副編集長と一緒にお会いしました。Cool head but Warm heartという言葉があるそうですが、初めてお会いする望月さんは、まさにそんな感じの方でした。

これまでウェブ媒体メインで活動されてきた望月さん、紙での長いルポは書いたことがないとおっしゃっていたけれど、私はどうしてもこの問題について望月さんによるルポで読みたくなり、執筆を依頼しました。ルポというのは、人柄が出ます。同じ現場に行き同じものを見ても、何に驚き、心を動かされ、読者に伝えたいと思うかは人によって違う。その意味でも、望月優大さんはこの問題をどう描くのだろう、どういう言葉を紡ぐのだろうと、知りたくなりました。

望月さんにお引き受けいただき、臨時国会がこの問題を審議し始めた11月半ば、横須賀市追浜、福島県郡山、大阪府豊中で取材を敢行しました。私も担当編集としてすべて同行させていただいたのですが、望月さんの取材に対する姿勢にまず敬服しました。取材が終わるごとに話してくれた「雑感」も、1つ1つの言葉が鋭さと優しさに満ちていて、すべて書き留めておきたいくらいでした。

在日28年の日系ペルー人、失踪した技能実習生、技術ビザで働くベトナム人と雇い主の日本人工場長。行く先々で、日本人を含め多くの方たちから話を聴いた望月さんは、長いルポをこう結びました――移民たちのリアルは、私たちのリアルでもある。

今週号の1万2000字には、この国で暮らす「移民」たちの声と、それを聴く望月さんの温かいまなざしがぎっしり詰まっています。ぜひ、お読みいただけると嬉しいです。

――編集部・小暮聡子

※本誌掲載のルポをウェブで全文公開しました(2018年12月17日)> 永住者、失踪者、労働者──日本で生きる「移民」たちの実像



※12月11日号(12月4日発売)は「移民の歌」特集。日本はさらなる外国人労働者を受け入れるべきか? 受け入れ拡大をめぐって国会が紛糾するなか、日本の移民事情について取材を続け発信してきた望月優大氏がルポを寄稿。永住者、失踪者、労働者――今ここに確かに存在する「移民」たちのリアルを追った。

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、歳出法案を再度非難 支持する議員は議席失

ビジネス

インタビュー:戦略投資、次期中計で倍増6000億円

ワールド

トランプ氏、イスラエル首相と来週会談 ホワイトハウ

ビジネス

ロビンフッド、EU利用者が米国株を取引できるトーク
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 5
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引き…
  • 6
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 10
    飛行機のトイレに入った女性に、乗客みんなが「一斉…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story