- HOME
- コラム
- From the Newsroom
- ムかない男の美学
コラム
ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
ムかない男の美学
エジプトのカイロ郊外にあるサッカラ遺跡。紀元前2300年頃に彫られたとされる古代エジプトのレリーフには、神官が少年に割礼を行なっている様子が描かれている。割礼とはペニスの先端の包皮を切除する習慣のことで、人類史上もっとも古い外科手術ともいわれている。
古代から行なわれてきた割礼が今、あらためて注目されている。というのも、アメリカ・カリフォルニア州を中心に割礼を禁止しようとする動きがあるのだ。
カリフォルニア州では、11月に行なわれた選挙で大麻の合法化をめぐる住民投票が行なわれたばかり(大麻合法化は否決)。そして次の住民投票に向け、割礼の是非を問う法案を作成しようとする動きがにわかに騒がれている。
割礼の何が問題なのか。割礼は子供のうちに行なわれるのが普通で、本人の意志と無関係に行われる。つまり、それは個人の人権侵害じゃないかというのだ。さらに割礼反対の活動を行なうNGO団体によれば、切除する包皮の先には神経が集中しており、割礼すると性行為での快感度が低下するという。
また見た目がスタイリッシュという意見もある。専用の器具を装着してペニスの先端を太股まで引っ張り固定し、何年もかけてジンワリと皮を引き伸ばす。割礼されたペニスを元の状態に戻すために、その方法を解説するサイトまで存在するのだ。
WHO(世界保健機関)によれば、世界中で約30%の男性が割礼し、その3分の2はイスラム教徒。イスラム教徒とユダヤ教徒は割礼を行なうことで知られる。例えばナチス・ドイツではユダヤ人を探すのに割礼しているかどうか調べたり、パキスタンのテロ組織はライバルで隣国のインド(ヒンズー教徒が大多数)からのスパイがいないかどうか調べるのに割礼されているかどうかを見るという話もある。
宗教以外の理由で割礼をもっとも多く行っているのはアメリカだ。アメリカではもともと、包皮があると衛生上よくないという理由で第2次大戦後に広まった。60年代には新生児の90%に行われたが、近年では56%にまで減少している。米疫病対策予防センターの調査では、09年に割礼を行なったアメリカ人は32%。06年から56%も減少しているという。
古代から行なわれてきた割礼が犯罪になる日も近い!?
――編集部・山田敏弘
この筆者のコラム
COVID-19を正しく恐れるために 2020.06.24
【探しています】山本太郎の出発点「メロリンQ」で「総理を目指す」写真 2019.11.02
戦前は「朝鮮人好き」だった日本が「嫌韓」になった理由 2019.10.09
ニューズウィーク日本版は、編集記者・編集者を募集します 2019.06.20
ニューズウィーク日本版はなぜ、「百田尚樹現象」を特集したのか 2019.05.31
【最新号】望月優大さん長編ルポ――「日本に生きる『移民』のリアル」 2018.12.06
売国奴と罵られる「激辛トウガラシ」の苦難 2014.12.02