ロシア

ドゥーギンの娘殺害で露反体制派NRAが「犯行声明」

2022年8月23日(火)17時13分
イザベル・ファン・ブリューゲン

反戦、反プーチンを掲げるNRAの犯行声明を発表したロシアの元下院議員ポノマレフ(2017年、亡命先のウクライナで)  Valentyn Ogirenko-REUTERS

<ウクライナに亡命したロシアの元下院議員を通じて「犯行声明」と「プーチン政権転覆」を宣言>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の「頭脳」の娘で、政治評論家のダリア・ドゥーギン(30)が8月20日、モスクワ郊外で自動車の爆発により死亡した。ロシアの元下院議員で現在はウクライナで亡命生活を送るイリヤ・ポノマレフは、この事件について、ロシア国内の反プーチン勢力「国民共和国軍(NRA)」が企てたものだと指摘する。

ポノマレフは、自身の反体制テレビチャンネル「Utro Fevralya」に出演し、ダリア・ドゥーギンを殺害したのはNRAのメンバーであり、ダリアとその父親アレクサンドルの両方が標的だったと語った。アレクサンドル・ドゥーギンは超国家主義を掲げる思想家で、ロシアによるウクライナ侵攻などの外交政策に影響を及ぼしたと言われている。

国民共和国軍(NRA)とは?

ポノマレフは、今回の事件が起きるまでその存在さえ知られていなかったNRAから、自身のメッセージアプリ・テレグラムのチャンネルを通じて、NRAの「マニフェスト」を公表する許可を得たと語った。NRAは自分たちのことを、ロシアの活動家や軍人、政治家で構成する「戦闘員およびパルチザン」集団だと説明している。

ロシアは今回の自動車爆発事件について、ウクライナの仕業だと主張。一方のウクライナは関与を否定している。ポノマレフの主張について、本誌は裏付けを取ることができなかった。

2014年のクリミア併合について、当時ロシア下院で行われた採決で下院議員として唯一反対票を投じたポノマレフは、NRAからアプローチを受けたと語った。NRAは彼に、自分たちは「反プーチン」を掲げて戦っていると語ったという。

「NRAの戦闘員たちとは、ロシアの抵抗運動について伝えている私のテレグラムを通じて連絡を取り合っている」とポノマレフは語った。

NRAはその声明文の中で、ロシアによる隣国ウクライナへの軍事侵攻に反対を表明。プーチンは「憲法を修正し、同胞であるスラブ民族同士の戦争を引き起こし、ロシア兵を無意味な死へと追いやった権力の強奪者であり、戦争犯罪者だ」と非難した。ロシア政府や地方政府の当事者、さらに治安当局の関係者たちも「権力強奪の共犯者」だと非難した。

今、あなたにオススメ

本誌紹介

特集:破壊王マスク

本誌 最新号

特集:破壊王マスク

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

2025年3月 4日号  2/26発売

MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

人気ランキング

  • 1
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性【最新研究】
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    米ウクライナ首脳会談「決裂」...米国内の反応 「トランプに感謝」「米国の恥」「ゼレンスキーは無礼」
  • 4
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 5
    生地越しにバストトップがあらわ、股間に銃...マドン…
  • 6
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
  • 7
    「朝に50gプラスするだけ」で集中力と記憶力が持続す…
  • 8
    世界最低の韓国の出生率が、過去9年間で初めて「上昇…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    考えを「言語化する能力」を磨く秘訣は「聞く力」に…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 7
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 8
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 9
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
もっと見る
ABJ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。