NGC 628. (Judy Schmidt/Flickr, CC BY 2.0)
<「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」が観測した生データを多くのアマチュア研究者が詳しく分析し、新たな発見につなげようとしている......>
2021年12月に打ち上げられた「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」が観測した宇宙のフルカラー画像と分光データが2022年7月12日、初めて公開された。多くのアマチュア研究者たちはその生データを詳しく分析し、新たな発見につなげようとしている。
長年、宇宙の生データを処理し、驚異的な天体の画像を制作してきたジュディ・シュミット氏もその一人だ。このほど「NGC 628(M74)」と「NGC7496」の画像をツイッターと画像共有サイト「フリッカー」で相次いで公開した。いずれの天体も天の川銀河に比較的近く、近傍銀河の観測プロジェクト「PHANGS」の一環として現在も観測が続けられている。
地球から3200万光年離れたうお座にある渦巻銀河「NGC 628」は、はっきりとした形のよい渦状腕を持つ。この渦状腕には星を形成するガスが豊富に存在するとみられ、2000年以降、少なくとも3つの超新星が観測されている。
地球から2400万光年離れたつる座にある「NGC 7496」は、中心に棒状の構造が存在する「棒渦巻銀河」だ。銀河円盤の密度が不均一であるため、密度の高い領域が星を引き寄せ、棒状になったと考えられている。中心に向かってガスが内側に流れ込むことから、この棒は星形成が盛んな領域だとみられ、星がどのように生まれるのかを研究するうえで適した場となっている。
1990年に打ち上げられた「ハッブル宇宙望遠鏡(HST)」は可視光線と紫外線で観測する一方、その後継機である「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」は赤外線で観測するため、それぞれの観測を補完し合えるという利点がある。「ハッブル宇宙望遠鏡」がガスをとらえ、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」がその内部の生まれたての星を観測できるわけだ。
「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」は宇宙空間でおよそ月1回の頻度で微小隕石と遭遇している。アメリカ航空宇宙局(NASA)は、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」からのフルカラー画像を初公開した同日、「『ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡』の主鏡を構成する18枚の鏡のうちの1枚が2022年5月22~24日に微小隕石と衝突し、修正不能な損傷を受けた」との報告書も公表した。幸い、その影響はごく一部にしか及ばず、望遠鏡全体への影響は軽微だという。
【画像】>>■■アマチュア研究者が生データを処理した渦巻銀河の画像に圧倒される■■