ゲーム

「ビデオゲームをする人は意思決定能力と脳活動が強化される」との研究結果

2022年7月22日(金)18時50分
松岡由希子

「ビデオゲームは、意思決定能力に関連する認知トレーニングの有力な候補になりうる」Helene Pechard-iStock

<これまで、ビデオゲームが意思決定能力や脳にもたらす有益な作用については十分に解明されていなかったが......>

米国居住者5000人を対象とした2021年のアンケート調査によると、ビデオゲームをする人の割合は76%で、その利用時間は週平均16.5時間だという。しかしこれまで、ビデオゲームが意思決定能力や脳にもたらす有益な作用については十分に解明されていなかった。

意思決定能力に関連する認知トレーニングの有力な候補になる

米ジョージア州立大学の研究チームはこのテーマについて研究し、「ビデオゲームを頻繁にプレイする人はそうでない人に比べて意思決定能力に優れ、脳の主要な領域の活動が強化されている」ことを示した。その研究論文は2022年6月22日付の学術雑誌「ニューロイメージ:リポーツ」に掲載されている。

研究チームは17~23歳の47人を対象に認知機能検査を実施するとともに、fMRI(磁気共鳴機能画像法)で脳の反応を測定した。被験者のうち定期的にビデオゲームをする人は28人、そうでない人は19人であった。
被験者は鏡のついたfMRI装置の中に横たわり、画面上の点が移動するとき、左右いずれかのボタンを押して点が動く方向を示し、点が移動しないときはいずれのボタンも押さないよう指示された。

その結果、ビデオゲームをする人はそうでない人に比べて反応が約0.19秒速く、正確性が2%高かった。研究チームは「速さと正確性のトレードオフがないため、ビデオゲームは、意思決定能力に関連する認知トレーニングの有力な候補になりうる」と考察している。

意思決定能力を向上できる可能性がある

また、よく活性化される脳領域の信号変化の割合を比較すると、ビデオゲームをする人は、行動的反応の向上に関与する右舌状回、右補足運動野(SMA)、左視床で、タスクに関連する信号変化が増加していた。研究チームは「ビデオゲームをすることで、感覚や知覚、行動へのマッピングのためのサブプロセスのいくつかを強化し、意思決定能力を向上できる可能性がある」との見解を示している。

研究論文の筆頭著者でジョージア州立大学のティモシー・ジョーダン研究員は、幼少期に片目の視力が弱く、5歳頃、視力が弱い片目だけでビデオゲームをするという視力回復法の研究プロジェクトに参加した経験を持つ。その後、ビデオゲームのトレーニングによって視覚情報処理機能が強化され、ラクロスやペイントボールができるまでになったという。

今回の研究成果は、ビデオゲームをすることで、タスクパフォーマンスの向上に向けて脳がどのように変化するのかを示すものとして、注目される。

今、あなたにオススメ
話題のニュースを毎朝お届けするメールマガジン、ご登録はこちらから。

今、あなたにオススメ

本誌紹介

特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門

本誌 最新号

特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

人気ランキング

  • 1
    クルスク州「重要な補給路」がHIMARASのターゲットに...ロシアの浮橋が「跡形もなく」破壊される瞬間
  • 2
    非喫煙者も「喫煙所が足りない」と思っていた──喫煙所不足が招く「マナー違反」
  • 3
    【クイズ】世界で最も競技人口が多いスポーツは?
  • 4
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 5
    トランプの勝利確率は6割超、世論調査では見えない「…
  • 6
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 7
    共和党の重鎮チェイニー父娘、党内の反トランプ派に…
  • 8
    伝統のカヌーでマオリの王を送る...通例から外れ、王…
  • 9
    米国内でのスパイ摘発が在米中国人社会に波紋...米当…
  • 10
    米大統領選でトランプ・バンス陣営を襲う「ソファで…
  • 1
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 2
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 3
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
  • 4
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 5
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 6
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 7
    「私ならその車を売る」「燃やすなら今」修理から戻…
  • 8
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 9
    メーガン妃の投資先が「貧困ポルノ」と批判される...…
  • 10
    世界最低レベルの出生率に悩む韓国...フィリピンから…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 10
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
もっと見る