北欧2カ国の加盟を一転容認したエルドアンの腹の内は VALERIA MONGELLI-BLOOMBERG/GETTY IMAGES
<北欧2カ国の加盟支持と引き換えに、「ごね得」エルドアンが手に入れたもの>
北欧のフィンランドとスウェーデンのNATO加盟について、難色を示してきたトルコが6月28日、一転して支持することで合意した。1カ月にわたって難航してきた加盟協議に、ようやく打開の道が開けた。
フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領は、協議後に声明を発表。北欧2カ国とトルコが「互いの安全保障への脅威に対する全面的な支援」を行い、トルコが2カ国のNATO加盟を支持することを確認する共同覚書に署名したことを明らかにした。
北欧2カ国は共同覚書の中で、テロリストの身柄引き渡しを求めるトルコの要求に対処することに合意。さらにトルコが反政府勢力と見なすクルド労働者党(PKK)やギュレン運動を一切支援しないことも約束した。
両国は、シリアのクルド人民防衛隊(YPG)を支援しないことにも同意した。YPGは、過激派組織「イスラム国」(IS)に対する主な抵抗勢力としてアメリカが支援するシリア民主軍(SDF)の主力部隊だ。これに加えてスウェーデンは、トルコへの武器禁輸措置を解除することにも合意した。
トルコ側の要求をほぼ丸のみした形の合意成立には、懸念の声も上がっている。だがNATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長は、北欧2カ国が「史上最速」でNATO加盟を果たせば、ロシアがウクライナに全面侵攻してもNATOの拡大は阻止できないというメッセージになると語った。「(ロシア大統領のウラジーミル・)プーチンへの明確なメッセージだ。NATOの扉は開かれていることを示したい」と、ストルテンベルグは言う。
新規加盟国の承認には、NATO加盟30カ国全ての同意が必要だ。しかし北欧2カ国の加盟申請についてトルコは当初、反対を表明していた。トルコがテロリストと見なすクルド人の分離独立主義者を、両国が受け入れているというのが主な理由だった。
ニーニストはトルコとの協議後に発表した声明の中で、トルコ側との最終合意には、北欧2カ国からトルコへのクルド人テロ容疑者の引き渡しが含まれる可能性があると示唆している。
フィンランドとスウェーデンのNATO加盟は、70年間にわたって軍事的中立を掲げてきた両国の立場に反する動きだ。この2カ国は冷戦中に米ソのどちらにもつかない道を取り、その後も中立政策を維持してきた。