コロナ第2波に身構えるローマの人々(11月14日) Remo Casilli-REUTERS
<新型コロナウイルス感染症は2019年12月の武漢で最初に報告されたという公式見解が覆れば、このパンデミックの歴史が書き換えられることになる>
イタリアの科学者らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019年9月からイタリアで拡散していた可能性があると考えている。この見解は、新型コロナウイルスがこれまで考えられていたよりも数カ月早く、中国国外で広がっていたことを示唆している。
世界保健機関(WHO)によれば、COVID-19と呼ばれる疾病の発生は、2019年12月に中国中部の武漢市で最初に報告された。イタリア最初の感染者は、北部ロンバルディア州のミラノ近郊の町で2020年2月21日に確認された。
だが、ミラノにある国立がん研究所の研究によると、早いものでは2019年9月の血液サンプルから新型コロナウイルスの抗体が検出された。この知見により、「パンデミックのこれまでの経緯が書き換えられる可能性がある」と研究チームは述べている。
学術誌「Tumori Journal」(「Tumori」はイタリア語で「腫瘍」の意味)で発表されたこの研究では、イタリア第一波の中心となったミラノで2019年9月から2020年3月までにがん治験に任意参加した1000人近い人(全員が無症状)の血液サンプルを調べた。
その結果、11%を超えるサンプルで、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に特異的な抗体ができていたことがわかった。抗体は、2020年2月よりもかなり前から見られ、2019年9月に採取した血液サンプルでは14%から抗体が検出された。
「この研究結果は、イタリアで最初の感染者が確認される数カ月前、予想外のきわめて早い時期から、無症状者のあいだでSARS-CoV-2が広まっていたことを示している」と研究論文の著者らは書いている。「イタリアでCOVID-19発生が報告される前の無症状者からSARS-CoV-2抗体が検出されたことで、パンデミックのこれまでの経緯が書き換えられる可能性がある」
これまで考えられていたよりも早い時期から新型コロナウイルスが存在していた証拠を科学者が発見したのは、今回が最初ではない。3月にはイタリアの研究者らにより、ロンバルディア州では2019年10〜12月期に報告された重症の肺炎やインフルエンザの症例数が通常より多かったと指摘され、新型コロナウイルスが当時から流行していた可能性が示唆されていた。
5月にはフランスの病院が、欧州で最初の感染者が公式に報告される1カ月ほど前にCovid-19患者を治療していたことを明らかにした。パリ近郊のアビセンヌ病院とジャン・ベルディエ病院で救急蘇生の責任者を務めるイブ・コーエン医師によれば、12月と1月に肺炎の治療を受け、インフルエンザ検査で陰性だった患者24名の古いサンプルについて、科学者が再検査を実施した。そのうち、12月27日にサンプルを採取した患者1名で、COVID-19陽性の結果が出たとコーエンはTVに話した。