イギリスの街角に立つ浅黒い肌の彼らは、カメラを見据えながらこう問い掛けているようだ――自分はいったい、何者か?
パキスタン系イギリス人の写真家マタブ・ハサンは、現代イギリス社会に生きる南アジア系ムスリムの青年たちを9年間にわたり撮影してきた。ロンドン、ノッティンガム、バーミンガムなどの地域社会で彼らと対話し、その言葉も記録する。
ハサンがこのプロジェクトに乗り出したのは、移民の両親の元に生まれた自身の境遇ゆえだ。同じ移民の居住地区で過ごした幼少期は人種について疑問に思うこともなかったが、両親の離婚で状況は一変。白人労働者階級地区に移り住むと、「パキ」「いつ国に帰るんだ」といった言葉を浴びせられるように。一方で、白人の友人もできたハサンはパキスタン系の仲間から「白人過ぎる」と揶揄された。
移民の中だけで育ったら、「自分と違う人々を恐れるようになっただろう」とハサンは言う。「白人至上主義者がマイノリティーに恐怖を抱くのと同じ。人種差別は双方向に働く」
アイデンティティーの探求にもがく若者たちの姿を、ハサンは鮮やかに切り取っている。
撮影:マタブ・ハサン
1981年、イギリス生まれ。両親はパキスタンからの移民。シティ大学ロンドンとノッティンガム・トレント大学でアートなどを学び、後者で博士号の取得予定。英芸術・人文科学研究評議会をはじめ、多くの芸術関連団体やメディアから高い評価を受けている。本作は最新写真集「You Get Me?」(英MACK社刊)からの抜粋
Photographs by ©Mahtab Hussain 2017 courtesy MACK; from the book "You Get Me" co-published by MACK and Light Work
[本誌2017年11月21日号掲載]
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