テロ容疑者への残虐な拷問、有刺鉄線が張り巡らされたフェンス、オレンジ色のつなぎの囚人服──キューバのグアンタナモ米海軍基地は、アメリカの対テロ戦争の負の側面が凝縮された場所として人々の脳裏に強烈に焼き付いている。
だが、世間に広がるそうしたイメージだけではグアンタナモの真の姿を伝え切れない。そう考えた写真家デビ・コーンウォールは、ここに「隔離」されている人々──米軍兵士と収容者の双方──の生活をカメラに収めることで、基地をめぐる議論に一石を投じようとしている。
整然とした居住空間や充実した娯楽施設、青い海と空などの写真が映し出すのは、従来のグアンタナモのイメージとは一線を画したシュールな現実だ。そして、そこからは米兵と収容者の意外な共通点も浮かび上がる。ここでの生活は規律と秩序と退屈さに支配されており、自ら望んでこの地にとどまっている者は誰もいないということだ。
オバマ政権は09年に収容施設の閉鎖を決めたが、議会の反対で計画は頓挫。14年11月では148人が拘束中だ。収容者の半数以上は何年も前に釈放が決まっているが、受け入れ国が見つからないため拘束が続いている。
Photographs by Debi Cornwall
<本誌2014年12月2日号掲載>
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