貧困国の労働者を取り巻く過酷な現実や、住む土地を追われた難民の姿をレンズで切り取り、生ある者の尊厳を伝えてきた報道写真界の大御所セバスチャン・サルガド。彼が次に目を向けたのは、私たちが暮らす地球そのものの美しさだった。
文明社会の出現によって地球環境は大きく破壊されてきたが、一方で太古の昔から変わらぬ姿で存在し続けるものもある。南極の氷河やアマゾンの密林などの大自然、厳しい環境を生き抜く野生動物、原始的な生活を守り続ける先住民族......。サルガドのモノクロ写真は、悠久の時を経てなお変わらないものの姿を通して、既に破壊されてしまったもの、今まさに失われようとしているものを浮き彫りにするという野心的な試みだ。
サルガドは04年以降、32回もの撮影旅行で世界中を巡った。あるときは徒歩で、あるときはカヌーや軽飛行機で、時には気球まで使って辺境の地を訪ね歩いた壮大なプロジェクトは、写真集『ジェネシス(創世記)』に結実。ニューヨークで展覧会が開催されている(9月19日〜2015年1月11日まで)。
圧倒的なパワーで地球環境と人類の関係の再考を迫る『ジェネシス』は、サルガドの言葉どおり、まさに「地球へのラブレター」だ。
Photographs by Sebastião Salgado/Amazonas images-Contact Press Images
<本誌2014年9月23日号掲載>
展覧会「セバスチャン・サルガド:ジェネシス」(国際写真センター)
写真集「ジェネシス」
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