今年3月にウクライナからの独立を宣言し、ロシアに編入されたクリミア半島。世界の注目を集めるこの半島に、多くの少年が集まってくる人里離れた場所がある。彼らの目的は、コサックの兵士として訓練を受けること。写真家マキシム・ダンデュクはその様子を撮影することを許された。
山と森に囲まれた中世の要塞で行われるキャンプでは7〜16歳の少年たちが、実戦経験のある教官から2週間の特訓を受ける。内容は野外での調理や戦闘術、歩行訓練、実弾を使った射撃練習などさまざまだ。キャンプには少年なら誰でも参加できるが、多くは地元でコサックの学校に通うコサックの息子たち。一見、キャンプは単なる傭兵の養成所のようだが、コサックが信仰する正教会の教えも説かれる。ある教官は「精神面を鍛えず殺しの技術だけを教えていては、祖国の守護者ではなく、ただの殺人鬼を育てることにしかならない」と言う。
キャンプ出身者の一部は、今回のロシア編入劇に関わった。だが皮肉にも編入のせいで、ウクライナ・ロシア両国の少年を受け入れてきたキャンプの在り方は今後変化しそうだ。
Photographs by Maxim Dondyuk
<本誌2014年6月17日号掲載>
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