パスポートの性別欄に「第3の性」
これまで女性と男性しか選べなかった英パスポートが変わるか MILAN LIPOWSKI/ISTOCKPHOTO
<トランスジェンダーに朗報? イギリス政府がパスポートの性別欄に男性でも女性でもない第3の性「X」の導入を検討中>
LGBT(ゲイやトランスジェンダーなどの性的少数者)の権利向上をめぐる新たな闘いが、意外なところで始まっている。パスポートの性別欄だ。
イギリス政府はLGBTのための人権グループの訴えを受けて、パスポートの性別上の区分に「第3の性」を加えるかどうかを検討していると明言した。
生まれたときの性と自己認識としての性が一致しないトランスジェンダーの人などの場合、外国に出掛ける際にパスポートに記載された性別と外見が異なるという理由で飛行機への搭乗を拒否されるケースが少なくない。そのためイギリス国内の65万人強のLGBTコミュニティーでは、外国旅行へのためらいが広がっている。
BBCの報道によれば、LGBTのための人権団体ストーンウォールは、パスポートの性別欄に女性(F)でも男性(M)でもない「X」という区分を設ければ、こうした人々の苦しみを軽減できると主張している。この変更は、肉体的な特徴が女性にも男性にも当てはまらないインターセックスの人々にも恩恵をもたらすと、彼らは言う。
「トランスジェンダーの中には、こうした性別区分を自分のアイデンティティー証明と考える人々もいる」と、ストーンウォールの顧問団の1人であるタラ・ストーンはBBCに語った。
ストーンウォールが変えようとしているのはパスポートの性別欄だけではない。彼らは170人のトランスジェンダーと、トランスジェンダーの子供の親たちから広範な意見を聞き取り、今後数カ月の運動目標「変化のビジョン」を策定した。
彼らの主要目標の1つは、イギリスの性別認定法を改正し、法的な性別認定の際に医学的証拠を提出しなくてもいいようにすること。性的アイデンティティーも「保護される特性」に含めるべく、平等法の改正も目指している。
こうした機運はイギリスだけでなく、世界各地に広がっている。既にドイツ、オーストラリア、ニュージーランド、バングラデシュ、インド、ネパール、パキスタンの7カ国では、パスポートの性別欄で「第3の性」を選択することができる。
オーストラリアでは11年の法改正以前は、性転換手術を受けていない人々がパスポートの性別を変更することはできなかった。だが今では、インターセックスの人々は性別欄で「X」を選べる。トランスジェンダーの人々は医師の診断書があれば、性別欄で男性か女性のどちらかの性を選べる。