韓国はなぜ日本の入国制限に猛反発したのか
さて、この様に同じく新型コロナウイルスの流行拡大の脅威に直面する日韓両国であるが、その対処の方法は大きく異なっている。違いのポイントは大きく二つあり、それは感染の有無の「検査」と、検査の結果感染が確認された患者の「医療措置」の在り方である。報道されている様に、この点で日本政府は、「検査」と「医療措置」の双方の拡大に消極的な姿勢を取っている、と言われている。背景にあるのは、大量の人々が「検査」と「医療措置」を求めて医療機関に殺到する事で、その能力を超える事態、つまり「医療崩壊」がもたらされる事への懸念である。同時に、感染者が医療機関に殺到する事で、逆に病院において感染が広がる可能性があり、PCR検査では一定の確率でしか感染者を確定することができない事も指摘されている。だからこそ、治療方法が存在しない現状では、感染の疑義がある人を含めて、自宅待機を有効に利用するのが賢明だ、というのがこの方針を支える理屈になっている。
戦略としての大量検査
これに対して、韓国政府は日本政府とは対照的な施策を取っている。即ち、韓国政府が進めているのは積極的に「検査」を行い、集団感染をできるだけ早期に発見してその芽を摘むと同時に、患者を早期に社会から隔離して「医療措置」を進める事であった。この為に韓国政府は当初、「検査」により感染が明らかになった人を可能な限り医療機関に入院させる方向で「医療措置」を行い、これを積極的に進める事になった。
背景にあったのは、韓国政府の「準備」と「自信」であった。実際、韓国においては2月末には一日当たりの検査者数が1万人を突破するなど、膨大な数の検査が毎日行われており、この点が「検査難民」の存在が指摘される我が国との大きな違いとなっている。そして当然の事ながら、この様な大規模「検査」を可能とする韓国の状況は、今回のウイルス流行後、直ちに作られた訳ではない。韓国では2015年にMERS(中東呼吸器症候群)の流行が起こっており、186人の感染者と38人の死亡者を出す事となっており、この時の教訓が今回の新型ウイルスへの対処の原型になっている。とりわけこの時には、ウイルスが大型病院での院内感染を通じて広がり、多くの死者を出した事への批判は強く、時の朴槿恵政権には強い批判が向けられることになっている。
韓国・尹錫悦大統領に迫る静かなる危機と、それを裏付ける「レームダック指数」とは 2024.11.13
「ハト派の石破新首相」という韓国の大いなる幻想 2024.10.16
全斗煥クーデターを描いた『ソウルの春』ヒットと、独裁が「歴史」になった韓国の変化 2024.09.10
「ディオール疑惑」尹大統領夫人の聴取と、韓国検察の暗闘 2024.08.06
韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳 2024.07.03
「出生率0.72」韓国の人口政策に(まだ)勝算あり 2024.06.05
総選挙大勝、それでも韓国進歩派に走る深い断層線 2024.05.08