ニュース速報
ワールド

合成ニコチンの健康への影響巡り議論、中毒性がより高い恐れ

2024年05月30日(木)09時22分

米国などの国々で、いわゆる合成ニコチンを配合した電子たばこが登場し、健康への影響に議論が広がっている。写真は21日、コロラド州アーバダで撮影した電子たばこ(2024年 ロイター/Kevin Mohatt)

Emma Rumney

[ロンドン 29日 ロイター] - 米国などの国々で、いわゆる合成ニコチンを配合した電子たばこが登場し、健康への影響に議論が広がっている。

米食品医薬品局(FDA)や研究者らによると、現時点では科学的なデータが不完全だとされるものの、天然のニコチンに比べて作用が強力で中毒性も高い可能性があるという。

紙巻きたばこや多くの電子たばこに含まれる天然のニコチンは、たばこの葉から抽出されるが、合成ニコチンは天然のニコチンと類似の構造を持つ物質として人工的に合成され、米国のたばこ規制の対象にはなっていない。

つまり米国では、合成ニコチン配合の電子たばこであれば、コストや手間がかかるFDAの承認手続きを経ないで販売することが可能だ。

こうした中でたばこ大手アルトリア・グループは9日付のFDA宛て書簡で、6-メチルニコチンなどの合成ニコチンを電子たばこ向けに使用する動きに触れ、業界の規制の枠組みにとって「新たな脅威」が生じると警告し、具体的な対応を検討するよう求めた。

同社は「ニコチンの効果に似せるための化学物質の導入や普及拡大を野放しにすれば、米国の消費者に未知のリスクをもたらし、FDAの権威が損なわれかねない」と訴えている。

FDAは、個別企業とのやり取りについてはコメントしないと述べた一方、ロイターが6-メチルニコチンなどの合成ニコチンに関する見解を質問すると「さらに研究が必要だが、一部データからはこれらのニコチン類似物が、既に中毒性が高いニコチン自体よりも効き目が強く、思春期の脳の発達に変化を与え、青少年の注意力、学習力、記憶力に長期的影響を及ぼすかもしれない」と述べた。

またFDAは、このような合成物質の使用に関して「組織全体の観点」から吟味を続けているところで、青少年の健康に有害となる恐れがある製品から彼らを守ることに全力を注ぐ方針だと強調した。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:アフリカのコロナ犠牲者17万人超、予想を

ワールド

米上院、つなぎ予算案可決 政府機関閉鎖ぎりぎりで回

ワールド

プーチン氏「クルスク州のウクライナ兵の命を保証」、

ビジネス

米国株式市場=急反発、割安銘柄に買い 今週は関税政
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴された陸上選手「私の苦痛にも配慮すべき」
  • 4
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 5
    中国中部で5000年前の「初期の君主」の墓を発見...先…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「天然ガス」の産出量が多い国は…
  • 8
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 9
    「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新…
  • 10
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 8
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中