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アングル:中国地方都市、外資誘致へ大挙外遊 背後に成長ノルマ

中国の各都市や企業の幹部で構成される大規模な代表団が昨年12月以降、頻繁にアジアや欧州を訪問している。北京の大興国際空港で2020年7月撮影(2023年 ロイター/Thomas Suen)
[香港 6日 ロイター] - 中国の各都市や企業の幹部で構成される大規模な代表団が昨年12月以降、頻繁にアジアや欧州を訪問している。地方政府が成長率や雇用者数の目標達成を迫られる中で、外国から投資を大々的に呼び込む狙いだ。
ソーシャルメディア上の当局のアカウントを確認したり、代表団と面会した3人の関係者に取材したりした結果、詳しい実態が見えてきた。
<米国以外を重視>
中国は3年にわたり、経済活動を犠牲にしても新型コロナウイルスを徹底的に封じ込めようという「ゼロコロナ」政策の下で、国境を閉ざしてきた。ところが、この政策が解除された途端、香港からパリまで各地に代表団が次々飛び出していった。
香港で中国代表団と会った関係者は、こうした性急さが浮き彫りにしたのは、9兆ドルもの債務を抱えながら成長率押し上げを求められている地方政府のプレッシャーの大きさだと話す。
香港立法会で中国企業代表枠から選出されたエリック・イム議員は「政府のあらゆるレベルで、高い目標達成に向けたはっきりとした重圧が存在する」と指摘。地政学や通商の面での米国との緊張関係を背景に、代表団が米国以外の地域を重視しているとも付け加えた。
中国の李強首相は先週、「アジア版ダボス会議」と称されるボアオ・アジア・フォーラムで、中国経済は「ビジネスに開かれている」と強調し、外国投資家を口説き落として見せると約束した。
香港の2人の有力企業幹部は、面会した中国代表団のメンバーが港湾からバイオテクノロジー、芸術、スポーツに至る多様なプロジェクトへの投資資金を確保するのだ、というかつてないほどの決意をみなぎらせていたと語る。
このうちの1人は「中国は経済てこ入れのために外国資本を必要としている。こんな短期間にこれほどの人数、しかもニッチなレベルでやってきたことはない」と驚きをあらわにしている。
もう1人の幹部とイム氏は、中国側とのイベントが1日に8回から10回も設定されるケースがあったと振り返った。
<最優先事項>
江蘇省政府が中国版TikTok(ティックトック)の「抖音(ドウイン)」に投稿した動画によると、200人に上る代表団は中央政府がゼロコロナを解除した2日後の昨年12月9日、プライベートジェット機で、230件余りの商談を予定していた欧州へと出発した。搭乗時にメンバーが口々に「新規受注を獲得しよう、市場を拡大しよう」といったスローガンを叫ぶ様子もうかがえた。
多くの外国投資家は、今もなお外国企業にとって競争環境が不公平なことや、知的財産権保護の欠如、予測不能な規制運用などの不満を唱えているものの、幾つかの都市は商談成立を吹聴している。
例えば、広西チワン自治区の当局者は先週、ソーシャルメディアでドイツの建設関連企業に投資してもらう話を決めたと明らかにした。
福建省ホ田市はシンガポールとインドネシア、香港に派遣した代表団が、新エネルギーや金融、ファッションなどの分野のプロジェクトで総額218億元(32億ドル)、13件の投資契約に調印した。
上海に近い江蘇省無錫市は、香港とマカオ、深センを7日で巡った代表団が確保した1560億元相当の投資について85件もの調印式を開催し、そのもようは抖音で確認できる。
中国メディアによると、深セン市の場合、宝安区だけで今年1000億元の外資を取り込むことを目指している。共産党機関紙の人民日報は、同市の党トップが「深センは今年の投資やプロジェクト、前進を確保するためにできることは全て行う。安定的な成長は最優先事項だ」と発言したと伝えた。
(Clare Jim記者)