ニュース速報

ワールド

パウエル元米国務長官死去、湾岸戦争指揮 84歳

2021年10月19日(火)08時06分

米国で黒人として初めて国務長官と軍制服組トップの統合参謀本部議長を務めたパウエル元国務長官が18日、死去した。写真はパウエル元国務長官。2020年8月撮影(2021年 ロイター)

[ワシントン 18日 ロイター] - 米国で黒人として初めて国務長官と軍制服組トップの統合参謀本部議長を務めたパウエル元国務長官が18日、死去した。84歳だった。死因は新型コロナウイルス感染による合併症だった。家族がフェイスブックへの投稿で明らかにした。

家族によると、パウエル氏はワクチン接種を完全に済ませていた。

親しい友人によると、パウエル氏は多発性骨髄腫を患い、治療により症状が軽減・消失した「寛解」と呼ばれる状態だった。初期のパーキンソン病にもかかっていた。血液のがんである骨髄腫は人体の免疫機能を低下させ、新型コロナが重症化するリスクを高める。

パウエル氏はベトナム戦争に従軍し、負傷。87─89年にレーガン政権で国家安全保障問題担当補佐官を務め、ジョージ・ブッシュ(父)政権下の91年に統合参謀本部議長として湾岸戦争を指揮した。

その後、ブッシュ(子)元大統領の下では国務長官を務め、2003年2月5日に国連安全保障理事会で、イラクのフセイン政権が大量の化学・生物兵器を隠し持っており、世界に対する喫緊の脅威になっていると訴えた。

パウエル氏は後になって国連安保理で自身が主張した内容を振り返り、ブッシュ政権の他の当局者から提供された不正確でゆがめられた情報が多く含まれていたと認め、自身の経歴に一生残る「汚点」を残したと語った。

1996年に共和党から大統領選挙への出馬を検討したが、妻が身の安全に懸念を示したことで断念。2008年に黒人として初めて米大統領に当選した民主党のバラク・オバマ氏に対し党派を超えて支持を示した。

共和党の右傾化への懸念から、16年の大統領選でも民主党候補のクリントン氏を支持し、昨年の大統領選も共和党のトランプ氏は米国にとって危険な存在だと批判し、民主党候補のバイデン氏の支持に回った。

バイデン大統領は「大統領選でパウエル氏から受けた支持と、この国の魂のために共闘できたことに絶えず感謝している」とコメントした。

パウエル氏がコロナワクチンを接種していたことについては「非常に深刻な基礎疾患が2つあった。残念ながら(ワクチンは)効果を発揮しなかった」と述べ、国民に改めてワクチンを接種するよう呼び掛けた。

ホワイトハウスのサキ報道官は、ワクチン接種完了者の入院と死亡は「極めてまれ」だと指摘した。

ブッシュ(子)元大統領は声明で「多くの大統領がパウエル氏の助言と経験を頼りにしていた。大統領自由勲章を2度受賞するほど各大統領に愛されていた」と哀悼の意を表明。

英国のブレア元首相は、パウエル氏は自虐的なユーモアやスタッフへの優しさ、米国のために党派を超えて取り込む意欲を持っていたとし、「長年にわたり米国の軍事的、政治的リーダシップを発揮した偉大な人物だ。素晴らしい能力と誠実さを兼ね備え、非常に好感の持てる温かい人柄だった」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米北東部7州とNY市、独自のワクチン推奨で連携 政

ワールド

米つなぎ予算案、19日可決か 下院議長「必要な票あ

ビジネス

米フェデックス、6─8月期利益が予想上回る コスト

ワールド

米下院議員、中国の希土類規制解除なければ航空機発着
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中