ニュース速報

ワールド

「デキサメタゾン」は重症コロナ患者のみ利用を、WHO呼び掛け

2020年06月18日(木)03時14分

世界保健機関(WHO)は17日、初期段階の治験で新型コロナウイルス感染症の重症患者に対し効果が見られたステロイド系抗炎症薬の「デキサメタゾン」について、重症患者への利用に限るよう呼び掛けた。写真はWHOのロゴ。ジュネーブで2017年11月撮影(2020年 ロイター/Denis Balibouse)

[17日 ロイター] - 世界保健機関(WHO)は17日、初期段階の治験で新型コロナウイルス感染症の重症患者に対し効果が見られたステロイド系抗炎症薬の「デキサメタゾン」について、重症患者への利用に限るよう呼び掛けた。

英国の研究チームは16日、人工呼吸器や酸素吸入が必要な重症患者にデキサメタゾンを投与したところ、死亡率が約30%低下したと発表した。重症でない患者では効果は確認されなかったという。

デキサメタゾンは1960年代から使用されている安価な抗炎症薬。研究チームは、まだ研究は初期段階だが、デキサメタゾンが早期に重症患者に対する標準的治療になることを示唆するとしている。

WHOで緊急事態対応を担当するマイク・ライアン氏は会見で「同剤は、効果が明確に得られる重症、重篤患者の利用のために残しておくことが極めて重要だ」と述べた。

テドロス事務局長は16日夜に発表した声明で「酸素吸入や人工呼吸器を必要とする新型コロナ感染症患者の死亡率を下げることが示された最初の治療法だ」と称賛。研究チームから報告を受けており、数日内に完全なデータ分析が得られるとの見通しを示した。WHOは今後、複数の研究を統合した上で俯瞰(ふかん)的に分析するメタアナリシスの手続きを進めるとしている。

一方、韓国疾病予防管理局(KCDC)の鄭銀敬(チョン・ウンギョン)局長は、同薬をCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)患者に使用することに注意を呼び掛けた。

同局長は「韓国の病院では異なる炎症の患者の治療に(同薬が)既に長らく使用されている」と説明。「しかし、一部の専門家は同薬が患者の炎症反応を減らすだけでなく、免疫システムも損ない、副作用をもたらす可能性があると警告している。KCDCはCOVID-19患者にそれを使用することについて議論している」と述べた。

米国の医療従事者も、デキサメタゾンについて、期待を抱きながらも懐疑的な見方を表明。新型コロナの有力な研究結果が最近撤回されたことに言及し、データを見て確認したいとした。

こうした中、WHOは抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」について、各国で行っていた大規模治験を効果が見られないとして中止すると発表した。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独クリスマス市襲撃、容疑者に反イスラム言動 難民対

ワールド

シリア暫定政府、国防相に元反体制派司令官を任命 外

ワールド

アングル:肥満症治療薬、他の疾患治療の契機に 米で

ビジネス

日鉄、ホワイトハウスが「不当な影響力」と米当局に書
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 5
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 6
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 7
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 8
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 9
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 10
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 3
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中