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焦点:くすぶる会期延長観測、「想定外」の事態発生リスクも
5月29日、通常国会の会期末に向け、与野党の駆け引きが本格化してきた。国会で先月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 29日 ロイター] - 通常国会の会期末である6月20日に向け、与野党の駆け引きが本格化してきた。与党内には重要法案の成立を目指すために幅の会期延長を目論む声があるものの、学校法人・森友学園や加計学園を巡る問題で安倍晋三内閣が野党から攻撃される時間が長くなるというリスクを政府・与党が抱えることにもなりかねない。
永田町の「外野」からは解散の可能性を指摘する声も出始め、「想定外」のことが起きるのか身構える向きもある。
29日付読売新聞と朝日新聞の朝刊は、それぞれ2─3週間、20日前後の会期延長が検討され始めたと報じた。
政府が最重要視する「働き方改革関連法案」やカジノを含む「統合型リゾート(IR)実施法案」を確実に成立させるには、参院での審議時間を考えると、6月20日の会期内での成立は「ぎりぎりの状態」(与党関係者)。
29日も野党側の反対で、当初予定されていた衆院本会議での働き方改革関連法案の採決が31日に延期された。
ただ、自民党の萩生田光一幹事長代行は29日の会見で、会期延長の可能性について「報道でみた。検討はしていない」、「重要法案はあるが、会期内でしっかり議論し、結果を出したい」と述べるにとどめた。
この発言の背景として「早過ぎる時期に会期延長の思惑が広まると、国会運営が緩む」(与党関係者)との警戒感があるほか、会期延長はむしろ野党にとって「見せ場が増える面もある」(野党関係者)との見方もあるためだ。
28日の衆参予算委員会で、森友・加計問題を巡る集中審議が行なわれたが、野党側は疑惑が解明されていないとして、加計学園の加計孝太郎理事長らの証人喚問や参考人招致を求めている。会期が延長されれば、野党側が要求を強めるのは不可避だ。
また、延長された会期の中で、森友・加計問題で新たな事実が明らかになって政局に影響を与える可能性もある。
麻生太郎財務相は29日の会見で、財務省が23日に公表した森友学園との交渉記録について「財務省は今あるもの(資料)は全て出したが、検察が持って行った資料が検察から出てくることがあるかもしれない」と、追加資料が出てくる可能性に言及した。
当初、政府・与党は安倍首相が9月の自民党総裁選への立候補を念頭に「通常国会を会期末で締め、外交の成果を示したい意向があった」(与党関係者)とされる。
6月12日の開催とみられる米朝首脳会談が成功すれば、拉致問題の進展も期待できるため3選につなげる材料も期待でき、追い風が吹くとの期待感もあるようだ。
ただ、重要法案が成立しなければ、安倍内閣の政権担当能力を問われかねないとの懸念も、政府・与党の幹部は抱えている。そこで、リスクを覚悟しつつ、会期延長で「正面突破」するとのシナリオが練られているのではないか、との観測が与党内でくすぶっている。
仮に延長国会で野党が森友・加計問題で食い下がってきた場合、衆院解散という「伝家の宝刀」を抜いて国民に信を問い、過半数を制してこの問題に決着を付けるというシナリオも、与党を取り巻く関係者の一部から漏れてくる。
一方、25━27日に実施された毎日新聞や日本経済新聞の世論調査で、内閣支持率はそれぞれ約3割、4割で前回調査比で横ばい。同時に不支持率が5割程度と高率になっていた。
与党関係者の一部には、この不支持率の高さをみて、来年の参院選に不安を抱く声もある。
そうした点などを勘案し、安倍首相が総合的にどのような判断を下すのか──。内外の情勢が少しでも変化した場合、最終的な判断に大きな影響を及ぼす可能性がありそうだ。
(竹本能文 編集:田巻一彦)