ニュース速報

ワールド

アングル:G20議長国トルコ、内政混乱で影響力発揮できず

2015年09月02日(水)17時00分

 9月1日、トルコは今年G20議長国を務めるにあたって新興国代表として発言力を高めようとの野望を抱いていたが、そうした役割は望むべくもなくなったようだ。写真は首都アンカラで8月30日、トルコ国旗と同国空軍のアクロバット飛行チームのパフォーマンス(2015年 ロイター/Umit Bektas)

[アンカラ 1日 ロイター] - トルコは今年、20カ国・地域(G20)の議長国を務めるにあたって新興国代表として世界の低成長問題への対応策を取りまとめ、新興諸国の発言力を高めようとの野望を抱いていた。

しかしその後トルコ国内で問題が山積したため、そうした役割は望むべくもなくなったようだ。

6月の総選挙で与党・公正発展党(AKP)が過去10年強で初めて単独過半数を失ったのに続き、クルド人の多い南東地域で紛争が再燃して3年に及ぶクルド和平交渉は崩壊の危機に瀕した。

7月にはシリアとの国境近くで過激派組織「イスラム国」が背後にいると見られる自爆テロが発生し、トルコは米軍主導の有志国連合による空爆に加わった。

トルコの経済成長率は減速し、通貨リラは過去最低水準に下落。企業幹部や投資家は既に、2015年はトルコ経済にとって「失われた年」だと呼ぶ有様で、G20をめぐる野望は脇に追いやられてしまった。

ロンドンのリスクコンサルタント会社ストロズ・フリードバーグのトルコアナリスト、ジョナサン・フリードマン氏は「G20議長国の立場を利用して明確な目的を達成しようと目論む余裕はなくなった」と指摘。「トルコのソフトパワーは過去2年間で急速に衰えた。トルコは数年前なら得られたであろうG20における信頼感を、もはや失ってしまった」と話した。

4、5日にトルコの首都アンカラで開くG20財務相・中央銀行総裁会議では、中国経済やギリシャ金融危機への懸念が優先議題となりそうだ。

世界経済の状況が悪化する中で、トルコが決定的な役割を果たすことは考えにくい。特に先週、組閣に失敗した与党が新たな総選挙に向け選挙管理内閣を発足させ、国際的な評価の高いババジャン前副首相が外れたことで、情勢はさらに悪化した。

<国際協調は無理か>

ノムラのクレジットストラテジスト、ティモシー・アッシュ氏は週末のG20財務相・中央銀行総裁会議について、「これまでならムードを好転させるためにある種の国際協調戦略を模索しただろうが、今回は疑問だ」と言う。

米連邦準備理事会(FRB)の利上げ、中国の根深い問題、多くの新興諸国が抱える個別の問題は、G20の制御が及ばないとアッシュ氏は指摘。「現時点でトルコに何ができるのか疑問だ。政権がろくに機能していないのだから」と語った。

コラムニストのジラ・ベンメイヤー氏はヒュリエト紙で、ババジャン氏が政権を外れたことで、国際的な金融界・政界で信頼される人物がいなくなったと記した。

「残念なことに、トルコは宣伝の重要な機会を逃してしまった。国際的なメディアの関心は政権の危機、テロ事件、難民危機といった問題に集中している」とベンメイヤー氏は語った。

(David Dolan and Dasha Afanasieva記者)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

欧州委、XのAI「Grok」を調査 性的画像生成巡

ワールド

中国、春節中の日本渡航自粛勧告 航空券無料キャンセ

ワールド

OPECプラス有志国、3月の据え置き方針維持か 2

ワールド

インドネシア中銀理事に大統領のおい、議会委員会が指
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 6
    「楽園のようだった」移住生活が一転...購入価格より…
  • 7
    「20代は5.6万円のオートロック、今は木造3.95万円」…
  • 8
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 9
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 10
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 7
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中