ニュース速報

ワールド

日米豪が共同声明、中国の埋め立て非難 ASEANとも連携

2015年05月30日(土)21時08分

5月30日、シンガポールで行われているアジア安全保障会議で、日米豪が共同声明を発表し、中国の埋め立てを非難。写真は同会議に出席するためにシンガポールを訪れたカーター国防長官、29日に撮影(2015年 ロイター/Edgar Su )

[シンガポール 30日 ロイター] - 安全保障の協力関係を深める日米豪が、南シナ海における中国の埋め立てにそろって非難を強めている。30日にシンガポールで会談した3カ国の防衛相は、共同声明で「深い懸念」を表明。防衛力の向上支援などを通じてASEAN(東南アジア諸国連合)とも連携する方針を確認した。

<日米防衛相は講演でも中国非難>

日米豪の防衛相は、シンガポールで29日から開かれているアジア安全保障会議(シャングリラ対話)を利用して会談した。3カ国は共同声明で「南シナ海における中国による埋め立てに対する深刻な懸念」を表明。埋め立てを中止するよう求めた。

中国は埋め立てて造成した人工島に、滑走路や港湾を建設。米国防総省は、大砲が設置されていることも確認した。

日米豪とも、南シナ海で領有権を争う当事国ではない。しかし、同海域が重要な海上交通路であることから、中国が埋め立てた場所を軍事拠点化し、自由に航行できなくなることを恐れている。

カーター米国防長官は、会談に先立って行った講演でも、「中国による南シナ海の岩礁埋め立ては国際的なルールと規範を逸している」と非難。これまで通り、同海域での哨戒活動を続ける方針を強調した。同じく講演した中谷元防衛相は、「無法が放置されれば、秩序は破壊され平和と安定は崩れる」と語った。

アジアへのリバランス(再均衡)政策を進める米国は、同地域に兵力を傾斜配分するとともに、日豪といった同盟国に役割の拡大を求めている。自衛隊には哨戒活動を南シナ海にまで広げることに期待を寄せており、カーター長官は講演で、日本の安全保障政策が変化しつつあることに言及。「日本は東南アジアへの関与を強めている」と語った。

<中国は反発>

日米豪の防衛相は会談で、問題の当事者であるASEANとの連携を強める方針でも一致した。装備の提供や共同訓練、研修など、さまざまな手段を通じ、フィリピンやベトナムなどが防衛力を高めるための支援を継続していくことを確認した。

また、ASEANと中国に対し、南シナ海における実効性の伴う行動ルールに早期に合意するよう求めた。

こうした動きに対し、中国側は反発を強めている。中国軍事科学院の趙小卓・世界軍事部研究員は、講演したカーター長官に質問し、「米軍の偵察活動は、南シナ海の問題解決につながるのか」などと反論。「批判は事実無根で、建設的ではない」と述べた。

(久保信博 編集:宮崎大)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

パウエル米FRB議長は模範的なセントラルバンカー=

ビジネス

ルーブル、対ドルで上昇 年初から40%値上がり

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介断念も 進展なければ

ビジネス

りそな銀、21年ぶりに米拠点開設へ 現地進出目指す
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 7
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中