ホンダと日産、経営統合の構想とん挫 子会社化案で合意できず

2月13日、ホンダと日産自動車はそれぞれ取締役会を開き、経営統合協議の打ち切りを決定した。統合検討を発表した会見で両社の社長、都内で昨年12月撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Maki Shiraki Daniel Leussink
[東京/横浜市 13日 ロイター] - ホンダと日産自動車は13日、昨年末から進めた経営統合協議を打ち切ったと発表した。当初は持ち株会社方式による統合を検討したが、ホンダは途中で日産に子会社化を提案。この日午後に会見した三部敏宏社長は、統合に当たってスピード感の重要性を強調、日産の内田誠社長は「持ち株会社のほうが強い会社になれる」と語り、合意点を見いだせなかった。販売台数で世界4位の規模になるはずだった統合計画はとん挫した。
両社は昨年8月に結んだ電動化やソフトウエア分野の協業の枠組みの中で連携を続けるものの、統合による規模拡大を実現できなくなったことで戦略の練り直しを迫られる。特に業績が低迷し、資金が流出する日産は、新たなパートナー探しが早期に必要になる。
この日決算を発表した日産の内田誠社長は、「業績低迷に歯止めかけて、混乱を収束するのが喫緊の自らの役割」とした上で、「1日も早く果たすべき務めにめどをつけ、可及的速やかに後任にバトンタッチしたい」と述べた。
ホンダから子会社化を打診されたことについては、「それでうまくいくかなというのが正直な思いだった」と説明。「(日産の)ポテンシャルを最大限引き出せるか最後まで確信が持てず、統合協議の終了を決めた」と語った。
別途会見したホンダの三部社長は子会社化を打診した理由について、「もし厳しい判断が迫られる局面に対峙したとき、ホンダ、日産双方の代表者で構成されるボード(取締役会)では議論に時間を要し、判断のスピードが鈍る可能性が否定できない」と説明。事業環境の変化が速い中で「ワンガバナンス(一体化した経営体制)」を早期に確立する必要性を認識したとした。
三部社長は、日産にとって子会社化案は「相当厳しい判断になると想定していた。場合によっては合意が撤回される可能性も考えていた」とも語った。一方、「それ以上に恐れるべきことは両社の統合が遅々として進まず、将来より深刻な状況に陥ることであり、そうならないためにもこのタイミングで提案することにした」と述べた。
両社は昨年12月23日、経営統合に向けた検討の基本合意を締結。今年1月末までに方向性を発表し、26年8月に共同持ち株会社を設立、それぞれが傘下に入る形で統合を目指していた。日産が筆頭株主の三菱自動車も合流を検討していた。
しかし、ホンダは昨年末からの交渉の過程で日産に子会社化案を打診。複数の関係者によると、社内で反発が強まった日産は、2月5日に開いた取締役会で協議自体を白紙に戻す方針を確認した。翌6日に内田社長がホンダ本社を訪れ、三部社長に伝えた。。
両社は三菱自動車を含め、昨年8月に合意したソフトウエア分野などでの協業を続ける。内田社長は「ホンダと未来志向でメリットになるような協業につなげていきたい」と語った。三部社長は「今回の検討を通じて協業による相乗効果の潜在力は相応にあると両社で認識できた」と述べた。
三菱自動車の加藤隆雄社長は同日夜、記者団に対し「日産、ホンダとも(協業を)続けるし、いろいろなパートナーと協業の機会があればどんどん活用していきたい」と話した。
日産はこの日、2025年3月期の連結純損益が800億円の赤字になりそうだと発表した。販売不振を受けたリストラ費用を織り込んだ。営業利益の見通しは1500億円から1200億円に下方修正した。ホンダが同日発表した24年4─12月期の連結営業利益(国際会計基準)は、前年比5.9%増の1兆1399億円だった。25年3月期の見通しは1兆4200億円のまま据え置いた。
(白木真紀、Daniel Leussink 編集:久保信博)