ニュース速報
ビジネス

外資規制、買収防衛目的で利用する余地はない=財務省幹部

2024年09月03日(火)10時46分

外資による日本企業への出資を規制する「外国為替及び外国貿易法(外為法)」に関して、財務省幹部はロイターに対し、買収防衛を目的に恣意的に利用される可能性を否定した。写真は財務省。2011年撮影。(2024年 rロイター/Yuriko Nakao)

Makiko Yamazaki Ritsuko Shimizu

[東京 3日 ロイター] - 外資による日本企業への出資を規制する「外国為替及び外国貿易法(外為法)」に関して、財務省幹部はロイターに対し、買収防衛を目的に恣意的に利用される可能性を否定した。国内企業の経営権を取得する際の事前審査の手続きや内容は、対象企業の指定業種が「コア業種」か否かによって変わることはないという。

外為法では、国の安全保障等に影響を及ぼす可能性のある指定業種に区分された事業を持つ上場企業の株式を1%以上取得する場合、原則として海外投資家は事前に届け出て審査を受ける必要がある。一定の条件を満たせば免除される場合もある。指定業種のうち、航空機、原子力、半導体製造など、安全保障上特に重要な業種を「コア業種」に定めている。

財務省幹部は、個別案件についての言及は控えるとした上で、「指定業種を営む企業の経営権を取得・行使する場合、コア業種に該当するかどうかに関わらず、事前届出の免除基準にはあたらず、事前届出が必要」と説明。「コア業種は、指定業種のうち事前届出免除を原則として利用できない業種にすぎず、国の安全等が損なわれるおそれがあるかを審査することに違いはない」と強調した。 財務省幹部はまた、外為法は「対外取引自由の原則のもと、国の安全等を損なうおそれがある投資等一定の場合に必要最小限の規制を行うもの。投資先企業が区分の選択によって外為法を買収防衛に利用できるという見方はあたらない」と述べた。

外為法をめぐっては、小売り大手セブン&アイ・ホールディングスが、カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けた後に、コア業種を持つ企業への格上げを申請したと一部で報じられ、外為法が買収防衛の手段として利用されるとの懸念が一部の投資家から出ていた。財務省が公表している「事前届出該当性リスト」では、昨年4月時点でセブン&アイは指定業種を持つものの、コア業種に当たる事業はないとされている。

コンビニ事業は指定業種ではなく、外為法の審査の対象にはならない。ただ、同社の定款には金融、警備など70以上の業種が社の目的として記されている。

財務省によると、「事前届出該当性リスト」は各企業の調査票の回答をもとに分類。定期的に見直しているが、「コア業種に分類されるかどうかは、企業側が申請したり政府が承認したりする性質ものではない。審査の際に実際に営まれている事業の実態に照らし判断するものだ」(幹部)という。 セブン&アイによると、6月に東京証券取引所を通じて財務省から、企業構成や業種についての調査票が届き、8月23日の締め切りまでに回答した。定款に照らして、自社が行っている事業について回答するもので、コア業種への変更を求めるようなものではないという。クシュタールから初期的な買収提案を受けたことを19日に発表したが、調査票の回答はこれとは関係がないとしている。

外為法における外資規制は、国の安全に係る技術などの流出を防ぐことが目的。2023年度は2871件の事前届出があった。審査で問題があると判断されれば、株式取得の変更や中止の勧告、命令など是正措置を取ることができる。審査の過程で計画が変更されたり取り下げられる例もあるが、中止勧告はこれまで2008年の外資ファンドによる電源開発(Jパワー)株買い増しのケースのみ。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中