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焦点:中国不動産の碧桂園、中小都市で「薄利多売」が裏目に

8月16日、経営危機に陥った中国不動産開発大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)は、中小都市で暮らす人たちに「最上級の生活」を提供すると約束して事業を拡大してきたが、それが苦境の要因になっている。上海で8月9日撮影(2023年 ロイター/Aly Song)
[香港 16日 ロイター] - 経営危機に陥った中国不動産開発大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)は、中小都市で暮らす人たちに「最上級の生活」を提供すると約束して事業を拡大してきたが、それが苦境の要因になっている。
既に財政が悪化している中小都市は、碧桂園の危機によって未完成の住宅があふれ返り、中央政府が回避しようと努めている社会問題にもつながりかねない。
碧桂園は昨年、北部の徳州市や南部の茂名市といったいわゆる「三線都市」と「四線都市」からの収入が売上高全体の62%を占めた。また、同社が開発用に仕入れた土地の75%以上はこれらの都市にある。
新型コロナウイルスの感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策の実施に加え、その解除後も中国経済が低調に推移していることで、中小都市の不動産販売と物件価値は急減してしまった。
中国国家統計局が調べた最小規模の35都市の新築住宅平均価格は6月まで17カ月連続で前年を割れている。
2020年に5707億元(782億2000万ドル)だった碧桂園の売上高は昨年、3575億元まで減少。近年は資金の新規調達がより厳しくなっていることもあり、同社の手元資金はひっ迫している。
香港を拠点とするオスカー・アンド・パートナーズ・キャピタルのオスカー・チョイ最高投資責任者は「碧桂園が収支を均衡させるには毎月最低でも300億元(41億2000万ドル)の売り上げが必要だが、今年は100億─200億元程度にとどまっている。三線都市と四線都市で販売が非常に低迷している」と述べた。
<薄利多売モデルの限界>
碧桂園は、薄利で素早く大量の物件を販売する事業モデルで成功を収めてきた。規模拡大を達成したのは、地方政府から安いコストで広い土地を取得できた面が大きい。
3月には同社の楊恵妍会長が、昨年の中核的利益が90%目減りし、61億元もの純赤字を経常したことを受け、中小都市での事業を縮小すると発表したが、すでに手遅れだった感は否めない。・
オクスフォード・エコノミクスはリポートで、碧桂園が抱えるプロジェクトは中国全省にまたがって3121件に上り、約800件程度だった中国恒大集団よりもマクロ経済に対する脅威はより重大だとの見方を示した。
地方政府の歳入は、不動産セクターへの課税や土地売却に負う部分が非常に大きい。ノムラのチーフ中国エコノミスト、ルー・ティン氏がまとめたリポートによると、昨年の地方政府の歳入に占める不動産セクターからの税収は6.9%、土地売却は23.9%と合計で3割以上だった。
ところが、今年上半期の土地売却収入は2021年の同じ期間の半分に目減りし、特に土地売却収入への依存度が高い中小都市がより深刻な打撃を受けている。
ノムラは「中小都市における住宅需要のさらなる冷え込みに伴って、既に悪化している財政事情を一段と苦境に追いやる負の連鎖が生じる公算が大きい」と指摘した。
一方、碧桂園の危機で中央政府に介入を迫る圧力が日増しに高まってきている、と複数の専門家は話す。
PGIMフィクスト・インカムのアジア主席エコノミスト、ガーウィン・ベル氏は「不動産とその関連セクターは依然として(中国の国内総生産の)重要部分で、経済活動と地方財政の足を引っ張り続けている。不動産がもたらす負の波及効果を食い止めるには、これまで当局が受け入れてきたよりもずっと大規模な財政刺激策が必要になるだろう」と述べた。
(Clare Jim記者)
*動画を付けて再送します。