ニュース速報

ビジネス

インタビュー:半導体素材の競争力、業界再編より技術が重要=大阪有機化学社長

2023年07月26日(水)09時15分

 半導体材料モノマーで世界シェア首位の大阪有機化学工業の安藤昌幸社長はロイターとのインタビューで、機運が高まる半導体素材業界の再編に否定的な考えを示し、競争力強化に必要なのは規模ではなく技術力だと強調した(2023年 ロイター/Miho Uranaka)

[東京 26日 ロイター] - 半導体材料モノマーで世界シェア首位の大阪有機化学工業の安藤昌幸社長はロイターとのインタビューで、機運が高まる半導体素材業界の再編に否定的な考えを示し、競争力強化に必要なのは規模ではなく技術力だと強調した。

安藤社長は「再編が競争力につながるとは考えていない」とした上で、「技術力や開発力のない会社は、自然に淘汰される」と述べた。

同社は半導体ウエハーに回路パターンを転写するのに使うフォトレジストの高付加価値品の原料モノマーで世界シェア6―7割を持ち、JSRや東京応化工業など主要レジストメーカーに供給。需要拡大が今後期待される先端半導体向けの開発も進めている。

業界再編はレジストメーカーとの垂直統合、同業との水平統合があり得るが、安藤社長はいずれの可能性も否定した。垂直統合は他のメーカーへ供給ができなくなる上、研究開発費や設備投資など顧客当たりのコストが上昇すると説明。水平統合も設備や技術が異なるために「競争力は出ない」と語った。

戦略物資として重要性が高まる半導体の世界的な供給網の中で、日本は素材や製造装置に強みを持つ。しかし、個々の企業規模が比較的小さく、いずれ国際競争力を失う可能性が指摘されている。

レジストで世界シェア首位のJSRは6月、官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)の傘下に入ることを決めた。規模の拡大で競争力を高めることを狙い、株式を非公開化して同社主導で業界再編を進める態勢を整える。

一方、安藤社長は数千億円規模の設備投資が必要な台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子など半導体メーカーと比較し、「材料産業は規模を追いかけてコストダウンするビジネスではない」とした上で、最も重要なのは「技術力」と述べた。同社が扱う製品はモノマーだけで100種類以上。供給先ごとに仕様が異なり、それぞれ違う品質管理ができることに競争優位性があるという。

同社の主力はArF(フッ化アルゴン)用レジスト向けのモノマーだが、回路線幅1桁ナノメートル(ナノは10億分の1)の先端半導体の製造に欠かせないEUV(極端紫外線)向けの開発も進めている。安藤社長は微細化が進む中で添加剤としての需要が拡大するとみており、採用してもらえる「自信がある」と語った。

シティグループ証券の西山祐太アナリストは、同社のEUV向けモノマーの売り上げはレジスト市場の成長率(年30―40%)を上回るペースで伸びるとみている。機能性を多様化したいレジストメーカーの間で採用が広がるとし、「フォトレジスト市場よりも成長性が高い」と予想する。

*インタビューは25日に実施しました。

(浦中美穂、Sam Sussey 編集:久保信博)

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独ポルシェ、通期の業績予想引き下げ 第1四半期は中

ビジネス

HSBC、第1四半期は25%減益 関税巡る経済リス

ビジネス

ドイツ銀行、第1四半期は予想上回る39%増益 関税

ビジネス

独消費者信頼感、5月は改善 関税巡る不確実性なお重
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中