ニュース速報

ビジネス

中国、中南米貿易の大半で米国凌駕 バイデン政権でも差拡大

2022年06月09日(木)15時24分

 6月8日、ロイターが国連の2015-21年の貿易統計を独自分析したところ、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいるメキシコを除き、中南米諸国の中国との貿易額が対米貿易を上回っていた。写真は中国からの輸入品を売るペルー・リマの中央市場。2018年8月撮影(2022年 ロイター/Mariana Bazo)

[ブエノスアイレス/リマ/ロサンゼルス 8日 ロイター] - ロイターが国連の2015-21年の貿易統計を独自分析したところ、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいるメキシコを除き、中南米諸国の中国との貿易額が対米貿易を上回っていた。中国に追い越されたのはトランプ前政権の2018年からだが、バイデン政権が発足した昨年にこの傾向が加速していた。

昨年のデータ(暫定値)によると、中国はメキシコ以外の中南米諸国との輸出入総額が2470億億ドルで、米国(1740億ドル)よりはるかに多かった。中国とメキシコの貿易額も15年の約750億ドルから1100億ドルに増えたものの、米国とメキシコ間では15年の4960億ドルが6070億ドルに拡大していた。

中国との貿易増加が目覚ましいのは南米のアルゼンチンやチリ、ペルーだが、ブラジルでもそうした動きが見られた。南米の資源国などから中国が大豆やトウモロコシ、銅などを大量に輸入する一方、中南米で中国製品の市場シェアが拡大している。

ロイターが取材した現職の政府高官や元高官は、米国が約束を実体的な行動に移すのが遅い一方、中国が貿易や投資で中南米地域に単純に多くを提供していると指摘する。

ペルーのカプニャイ元駐中国大使は、メキシコは例外として、「中南米にとって商業的、経済的、技術的なつながりで最も重要なのが中国であるのは間違いない。米国よりずっと上だ」と語る。

BMJコンサルトレス・アソシアドのブラジルのパートナー、ウェルバー・バラル氏によれば、中国は輸送や他のインフラにひんぱんに投資をもたらす。これが中国による穀物や金属の買い付け契約を助けるという。一方で中南米諸国の政府は、米国が口先ばかりだと感じることがよくあるという。

バイデン米大統領主催の米州首脳会議は8日、ロサンゼルスで開幕。複数の米高官によると、バイデン氏は会議で「米州パートナーシップ」計画を発表し、既存の貿易協定を増強することで地域各国のコロナ禍からの経済回復を促進することを打ち出す構えだ。投資実行や米州開発銀行(IDB)てこ入れ、再生可能エネルギー関連の雇用創出、サプライチェーン強化などを目指す内容という。

ただ、そうした努力も米国内の保護主義的な反対に遭う可能性もある。ある米当局者は「中国に現金を交渉のテーブルに載せる用意がある限り、われわれは負け戦になるように見える」と語り、米政府の巻き返しが容易ではないことを認めた。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米、対スイス関税15%に引き下げ 2000億ドルの

ワールド

トランプ氏、司法省にエプスタイン氏と民主党関係者の

ワールド

ロ、25年に滑空弾12万発製造か 射程400キロ延

ビジネス

米ウォルマートCEOにファーナー氏、マクミロン氏は
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 9
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中