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アングル:加熱式たばこで競争激化、デバイス価格引き下げも
5月31日、加熱式たばこ市場を巡る競争が新たな局面を迎えている。需要に供給が間に合わず、店頭に並べば瞬間蒸発した時期は終わった。写真はJT社内で陳列された「プルーム・テック」関連商品。1月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 31日 ロイター] - 加熱式たばこ市場を巡る競争が新たな局面を迎えている。需要に供給が間に合わず、店頭に並べば瞬間蒸発した時期は終わった。先行したフィリップ・モリス・インターナショナル
<大手3社そろってデバイスの価格引き下げ>
フィリップ・モリスは、6月1日から加熱式たばこ「アイコス」をこれまでより3000円値下げし、7980円にすると発表した。PMジャパンのシェリー・ゴー社長は「(紙巻たばこからアイコスに)切り替えようかどうしようか考えている人が、もっと買いやすくなってもらうために希望小売価格の引き下げを行った」と説明している。
ゴー社長は価格競争ではないと話しているものの、これまで先頭を走ってきた同社を追い上げようという他社の動きが影響した可能性は否定できない。
5月に入りBATの「グロー」は、新聞や雑誌への積極的な広告と併せて、実質2980円という驚愕の価格を打ち出した。2980円のキャンペーンは、12月20日まで行われる予定。
JTも6月4日の全国展開に併せ「プルーム・テック」のスターターキットに付いていたキャリーケースを別売りとし、価格を4000円から3000円に引き下げる。紙巻きたばこでは圧倒的なシェアを有するため、プライスリーダーだったJTも、加熱式たばこは競合他社の状況をにらみながらの価格戦略となっている。
BATジャパンの広報担当者は「採算度外視ではないが、デバイスで儲けるつもりはない。スティックを買ってもらってもうけるビジネスモデル」と言い切る。外資系証券のアナリストも、加熱式たばこ市場でのビジネスは、デバイスの商売ではなく、いかに多くの消耗品を販売するかだと指摘している。
たばこの価格は、財務省の認可制となっている。加熱式たばこも、スティックやカプセルは同様に認可が必要となるが、デバイスの価格は、パイプやライターなどと同じような扱いで、各社が戦略に応じて設定することができる。まずはデバイスを購入してもらわなければ、スティックやカプセルの売り上げにはつながらないこともあり、顧客囲い込みのためにも、デバイスの価格戦略を強化する傾向が強まっている。
<市場拡大見通しは不変>
いち早く投入された「アイコス」は、専門店に行列ができ、整理券が配られるなど人気となり、市場が立ち上がってから3年余りでたばこ市場を大きく変えた。
しかし、足元では「供給不足が解消し、各社の商品が出そろったことで、1社が先行し、供給不足で店頭に商品を並べば売れる状況ではなくなった」(業界関係者)。フィリップ・モリスの1―3月期決算は、「アイコス」の日本での販売鈍化を主な要因として、事前の市場予想を下回った。
JTはプルーム・テックの営業部隊が企業や飲食店へのアプローチを強化しているほか、フィリップモリスはトラック業界の展示会でアピールするなど、各社とも、紙巻たばこ時代には行わなかったマーケティングを活発化させている。市場が成熟したわけではなく、まだ、拡大途上にあるとの見方は各社とも一致しており、中長期の市場拡大見通しも変更していない。
JTは、2018年にたばこ総市場に占める加熱式たばこのシェアが23%(17年は12%)になるとみていたが、この見方は現在も変えていない。英調査会社ユーロモニターによると、2017年の加熱式たばこ市場は約5000億円に達したとみられ、2020年には約9300億円に拡大するとみている。
最後発となったJTも、供給体制が整ったとして、6月4日から「プルーム・テック」の全国販売を開始、いよいよ大手3社が全国でぶつかる。佐々木治道専務執行役員・国内たばこ事業プレジデントはロイターに対し「ついに準備は整った、われわれは反転攻勢に自信を持っている」とコメントしている。
さらにJTは、今年末から来年初をめどに、「プルーム・テックの進化版」と「高温加熱タイプ」の2種の新製品を市場に投入する予定を明らかにしている。他社も、現在販売している製品が最終形態ではなく、さらに進化していくとの見方を示しており、新製品の開発に取り組んでいる。今年10月から5年かけて行われるたばこ増税、それに伴う価格戦略も波乱要因となる可能性を含みながら、新たなステージでの競争は激化していきそうだ。
*見出しを修正して再送します。
(清水律子 浦中大我)