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アングル:大手銀が支店統廃合で前倒し損失、困難な「両面作戦」

2018年05月15日(火)21時32分

 5月15日、大手行が、リテール支店網の収益化に向けて本格的に動き出した。4月都内で撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 15日 ロイター] - 大手行が、リテール支店網の収益化に向けて本格的に動き出した。三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306.T>と三井住友フィナンシャルグループ<8316.T>は2018年3月期決算で、支店網の統廃合にかかる損失を前倒しで計上。今後、高コスト体質のリテール事業を再構築する。

ただ「収入を維持したまま、リストラを進める両面作戦」(大手行役員)には困難も予想される。

<店舗統廃合で、コスト削減>  

三菱UFJは18年3月期に支店の統廃合に関連する損失を430億円、三井住友は250億円を計上した。店舗の改編、統廃合で今後発生する損失を前倒しで処理した。三菱UFJは、収益の生んでいない店舗の減損計上にも踏み込んだ。

三菱UFJは今後6年間で銀行支店約510カ店のうち、2割を削減。このうち、従来型は半減させるが、3割は機能を特化させた軽量店舗に置き換える。三井住友は約430カ店のうち、すでに約100店舗を次世代型に移行、残り2年ですべてを衣替えする。

みずほフィナンシャルグループ<8411.T>も100拠点を統廃合すると表明しているが、損失計上は見送った。

三菱UFJの平野信行社長は、リテール業務が赤字ではないとしたものの「このまま放っておけば、赤字になりかねない」と説明。顧客との接点について「リアルの店舗とネットやモバイルを適切に組み合わせる必要がある」と語った。

三菱UFJの来店客数は10年間で4割減少する一方、インターネットバンキングの利用者は5年で4割増えた。店舗の収益性は低下の一途だ。統廃合や小型・軽量店舗への転換により、運営コストを引き下げるのがリテール事業の課題だ。

<ネットワークの経済性に潜むわな>

ただ、収入を落とさずにリストラを進めるのは、難しいとの指摘も多い。ある大手銀行首脳は「支店を閉じれば、粗利(売上高)も確実に落ちる。しかも、店舗の撤退ができなければ物件費は残るし、人件費もすぐに減らせるわけでもない」と解説する。

銀行支店は、金庫など特有の設備があるため、簡単には次の借り手や買い手が見つからない。下手をすると、コストは大きく下がらないまま、粗利だけが減少していく悪循環に陥りかねない。

もう1つの懸念が、ネットワークの経済性に潜むわなだ。赤字店舗だけをリストラしようとしても、支店網は全体で収益を維持している側面もある。別の大手銀の企画担当者は「ネットワークが薄くなったり、き損すると、黒字店舗の収益も悪化しかねない」と心配もする。

<巨大な支店網を構築する欧米銀>

邦銀が支店網のリストラに走る中、欧米では巨大なネットワークを維持し、リテール業務で収益を上げている銀行も少なくない。

仏大手銀のBNPパリバや、スペイン大手銀のサンタンデールなどの本国での支店は、数千店規模だ。小規模・軽量化を進めた支店内では現金を一切扱わずに事務コストを大きく引き下げている。競争環境や人口密度などで一概には比較はできないが、邦銀の「1周先」を走っているのが実情だ。

マッコーリーキャピタル証券の守山啓輔シニアアナリストは「資産運用や信託業務などの分野では、リテール店舗の重要性は低下しない。高品質のサービスは対面が欠かせず、高収益性という形で顧客からの評価を得られる」と語る。

粗利はネットバンキングなどのデジタル・チャネルや、相談業務などの機能に特化した小型店舗で維持しつつ、コスト削減を図るという「両面作戦を闘うような厳しいオペレーション」(大手行役員)を強いられる大手銀。厳しい環境下で利益目標をどのように達成していくのか、経営陣の力量が問われることになる。

(布施太郎、取材協力:浦中大我 編集:田巻一彦)

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