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アングル:米で「ESG投資」が人気、課題は格付け基準の確立
6月27日、米国では、環境、社会的責任、企業統治に配慮している企業に投資する「ESG投資」の人気が高まっている。NY証券取引所前で昨年12月撮影(2017年 ロイター/Andrew Kelly)
[ボストン/ニューヨーク 27日 ロイター] - 米国では、環境、社会的責任、企業統治に配慮している企業に投資する「ESG投資」の人気が高まっている。しかしESG格付けの基準が統一されていないため、投資家は格付けに沿って投資しても期待通りの結果を得られるとは限らない。
ESG投資の流行に伴い、投資家にESG要因に基づく格付けを提供する業界も拡大しつつある。
しかし、ESGの観点から企業の良し悪しを判断する基準は確立されておらず、格付けに大きなばらつきがある。このため投資家は、格付けを利用しても、労働慣行や幹部報酬を巡って不祥事を起こすような企業への投資を避けられない場合もある。
「われわれには共通言語がない」と語るのは、エーケディアン・アセット・マネジメントで責任投資のディレクターを務めるアシャ・メータ氏だ。
持続性に関する調査企業CSRハブは、S&Pグローバル1200指数の構成企業にESG格付けを提供する2大業者の格付けを比較した。指数提供大手MSCI
これに対して信用格付けは、各業者の足並みがそろっている。ノーザン・イリノイ大のファイナンス教授、レイ・シュー氏の調査によると、ムーディーズとスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の格付けの相関係数は0.9前後だ。
この違いは、信用格付けが財務諸表に基づくのに対し、ESG格付けは、労働者の権利、環境汚染物質の排出量、石油流出事故や欠陥製品への対応などの要因の中で、業者によってどれに重きを置くかが異なることが原因かもしれない。
例えば電気自動車メーカーのテスラ
テスラはコメントを控えた。
ロイターの取材では、プロの投資家や企業幹部十数人が、統一基準がないことに不満を漏らした。
<共通言語>
彼らは1つの解決策として、基準の統一に加え、情報開示の義務化を挙げている。欧州連合(EU)は来年から、環境や社会的責任などの分野でどのような努力を行ったかについて、企業に報告を義務付ける。また一部の米企業は、独立組織である持続性会計基準審議会の提言に基づいて自主的に情報開示を行っている。
良い企業統治や持続的な企業戦略が、長い目で見れば収益にも好影響をもたらすことは、投資家の間でますます広く認識されるようになっている。このため統一基準の確立は喫緊の課題だ。
持続的責任投資フォーラムの推計によると、ESG要因のうち少なくとも1つを投資戦略に組み込んでいる米資産運用機関の運用資産は8兆ドル超と、2012年の1兆4000億ドルから増加した。
格付け業者は、最善の場合には投資家の損失回避を助けることができる。例えばMSCIとサステナリティクスは共に、独自動車大手フォルクスワーゲン
しかし、財務以外の情報は簡単には入手できない上、解釈も分かれるため、格付け業者が警告を発し損ねるリスクもある。
それでもウォール街のESG投資熱は衰えない。大手の資産運用会社は通常、格付けと併せて独自の調査を行っているが、中には格付けに不備がある可能性を周知した上で、概ね格付けに基づく投資を行っているファンドもある。
例えばブラックロック
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの投資責任者、リン・ブレーク氏は電子メールで、大規模で分散化されたポートフォリオにとっては、格付けのばらつきは大して問題にならないと指摘。「特に投資対象の広いインデックス型ファンドにとっては、(ESG格付けは)『合格点』に達している」との見方を示した。
(Ross Kerber記者 Michael Flaherty記者)