ニュース速報

ビジネス

アングル:欧米取引所が長期的効果にらみ中国と連携、リスクも

2015年09月28日(月)15時37分

 9月25日、欧米市場が成熟し飽和状態を迎える中で、海外に成長機会を見出そうとする欧米の証券取引所は、中国との連携強化に乗り出している。写真は上海で1日撮影(2015年 ロイター/Aly Song)

[ロンドン 25日 ロイター] - 欧米市場が成熟し飽和状態を迎える中で、海外に成長機会を見出そうとする欧米の証券取引所は、中国との連携強化に乗り出している。ただ、成果が得られるまで何年もかかる可能性がある上、今夏の中国市場の暴落が与えた影響は、欧米取引所が歩む道を予想よりもさらに長く険しいものにする可能性がある。

英国のオズボーン財務相が目指す中国との関係強化の一環で、英国と中国は21日、ロンドン証券取引所と上海証取を相互取引の実現可能性を検討することで合意。

これより規模は小さいものの、欧州の取引所運営会社ユーロネクストも最近、スポット、デリバティブ(金融派生商品)、各種指数およびデータの発展促進に向け上海証取と協力すると明らかにした。

TABBグループのアナリスト、レベッカ・ヒーリー氏は「取引所は投資機会の拡大とスケールメリットの向上を目指している」と指摘する。

今夏の中国株の乱高下を除外すれば、新規株式公開(IPO)案件獲得における中国との連携強化のメリットは明白だ。アーンスト・アンド・ヤングによると、2015年上半期に中国市場はIPO調達額で世界首位となり、第2・四半期には3件の大型上場があった。しかしその後の株価急落を受け、中国でのIPOは凍結され、投資家は新興国市場から資金を引き揚げている。

中国の市場自由化に向けた道のりは長いとの見方もある。ロンドン証取の広報担当者は、投資家は中国を1─2年の投資先ではなく「世代」という長期単位での投資先とみなしていると指摘する。

アナリストは、ロンドン─上海間の直接相互取引について、投資家は当面待つ必要があると指摘する。このようなプロジェクトは年間コストが容易に6桁に上り、投資家の投資意欲を減退させる可能性がある。さらに時差が流動性をさらに低下させる恐れもある。

他にも、政治や監督当局をめぐるリスクも指摘される。中国当局の介入行為は、特定の取引の禁止から公開調査に至る幅広い範囲に及び、欧米の市場の運営方法と明確な違いがある。

これらすべてが示すところは、欧米の取引所が目指す成長機会や取引フローの拡大はおそらく、中国などの新興国市場との連携強化によっては達成されないということだ。今年のボラティリティーの高まりやそれが投資家の意欲やIPO計画に与えた影響は、新興国との連携強化を図る欧米取引所が歩む道を予想よりもさらに長く険しいものにする可能性がある。

電子取引システム運営会社BATSチャイエックス・ヨーロッパのマーク・ヘムズリー最高経営責任者(CEO)は「中国経済の規模は非常に大きいため、人々が潜在的な機会とみなすのは当然だ」としつつも、「当初の想定より、はるかに事情は複雑だ」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和

ワールド

ロシア高官、和平案巡り米側と接触 協議継続へ=大統

ワールド

前大統領に懲役10年求刑、非常戒厳後の捜査妨害など
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 8
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中