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焦点:仏黄色いベスト運動、財政拡大路線がユーロ圏に波及も

2019年01月19日(土)13時14分

[ロンドン 11日 ロイター] - フランスのマクロン政権に抗議する黄色いベスト運動を受け、同国政府が国民の不満を抑えようと財政支出を増やす結果、ユーロ圏全体に財政拡大路線が広がる可能性がある。

ただでさえ欧州中央銀行(ECB)による金融緩和の終了に神経をとがらせているユーロ圏債券市場で、国債の供給が増えることになりそうだ。

各国の公的債務が増大すれば、ECBの利上げ計画にも支障となりかねない。

マクロン大統領は抗議運動を受け、年金生活者向けの減税と最低賃金の引き上げを約束した。これにより財政支出は80億─100億ユーロ増え、財政赤字の対国内総生産(GDP)比率はEUが上限と定める3%を突破する可能性がある。

イタリアとスペインも既に2019年度の財政支出を増やす計画を立てており、ドイツでさえ長年にわたる保守的な財政政策を見直そうとしている。

ピクテ・ウェルス・マネジメントのストラテジスト、フレデリック・ドュクロゼット氏は「イタリアとフランスの財政が柔軟化するなら、新時代の始まりだ。財政政策が転換点を迎える」と言う。

フランス10年物国債利回りのドイツ国債に対するスプレッドは、半年前に比べ2倍の50ベーシスポイント(bp)近くまで開き、過去1年8カ月で最も大きくなっている。

<ユーロ圏全体に波及>

ユーロ圏の債務が直ちに憂慮すべき水準になるわけではない。欧州委員会の試算では、ユーロ圏全体の財政赤字の対GDP比率は昨年が0.6%、今年は0.8%となる見通し。アナリストによると、フランスの財政支出増加によってこれが0.1%ポイント高まる。

より心配なのは、ユーロ圏第2、第3位の経済大国であるフランスとイタリアの財政拡大が前例となり、他の国々も追随する可能性だ。ただでさえ多額の債務を抱え、成長の鈍い国々が借り入れを増やすことになる。

資産運用大手アルムンディのマクロエコノミスト、トリスタン・ペリエ氏は「財政規律が緩むと、欧州の至るところでポピュリスト(大衆迎合主義者)勢力が勢いづくだろう。イタリアを筆頭に、南欧の国々も背中を押される」と述べた。

フランスの債務の対GDP比率は100%弱と、過去最高に近い。

バークレイズによると、ユーロ圏の国債新規発行額は今年、ECBによる国債償還金の再投資分を勘案しなければ、2014年以来で最大となる見通しだ。

もっとも、長年にわたり財政緊縮を続けてきた欧州にとって、財政拡大は景気を支えるために必要だとの声も多い。

ゴールドマン・サックスの推計では、財政政策の転換により2019年のユーロ圏のGDPは0.4%ポイント押し上げられる見通しだ。

ただJPモルガン・アセット・マネジメントの首席市場ストラテジスト、カレン・ウォード氏は「長期的な解決策となる財政拡大であれば素晴らしい。問題は、そうならない傾向があることで、そのシナリオでは債務の増大を心配する必要がある」と語った。

(Abhinav Ramnarayan記者、Dhara Ranasinghe記者)

ロイター
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