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アップルショック、象徴銘柄の急落が怖い理由

2019年01月04日(金)16時24分

[東京 4日 ロイター] - アップルショックが、また金融市場を襲った。業績下方修正の理由が中国での販売不振であったため、企業業績全体への懸念に広がり、世界的な株安が進んでいる。ただ、マーケットが不安視しているのは、業績悪化だけではない。同社株を組み込んでいたファンドへの影響や、自社株買いの減少など需給面への警戒感も株安の背景だ。象徴的銘柄の急落は、上昇相場を支えてきたマネーの逆回転を引き起こしつつある。

<自社株買いの減少>

アップルの自社株買いはすさまじい。2018年は9月までに752.7億ドル(約8兆円、出所:S&P Dow Jones Indices)の自社株買いを行っている。1社でS&P500社全体の10.4%を占める規模だ。過去10年間では2503億ドル(約27兆円)に達する。

そのアップルが業績下方修正を行った。中国でのiPhone販売減速を主因として、年末商戦を含む第1・四半期(12月29日まで)の売上高見通しを引き下げた。同社が四半期決算発表前に売上高見通しを下方修正するのは、2007年のiPhone発売後で初めてで、先行きへの不安が強まっている。

関連企業への受注減少だけでなく、いずれ同社の自社株買いにも影響が出るのではないか──。そうした警戒感も3日から4日にかけての世界的な株安の一因になった。

米株市場では、ここ数年、企業の自社株買いが買い手の筆頭となってきた。トリムタブスによると、米企業が2018年に入ってから発表した自社株買いは、過去最高の1兆ドル(約108兆円)を突破。発表ベースではない実際の購入額も、過去最高水準の見込みだ。

投資機会の減少により、企業は余裕資金を使って自社株買いを拡大するとの見方もある。しかし、リーマン・ショック時には、米企業の自社株買いは大きく落ち込んでおり、あくまで業績悪化の程度次第だ。

企業の業績悪化は、1株利益のスローダウンという株価のファンダメンタルズ的な要因だけではなく、需給的にもマーケットに大きな影響を与える可能性があるのが株式市場の現状である。

<ファンドのロスカット>

アップル株の急落で、もう1つ懸念されている波及経路はファンドにある。上昇相場の象徴的存在だったアップルが大幅下落したことで、ファンドのポートフォリオに大きな影響を与える可能性があるためだ。

昨年8月、アップルは時価総額1兆ドルを米上場企業で初めて達成。1980年の上場からの株価上昇率は、約5万%に達するなど上昇相場の象徴的存在だった。当時は「最も過小評価されている銘柄のひとつ」との声さえ出ており、昨年10─12月期に同社株を買い増したヘッジファンドも少なくない 。

しかし、昨年10月3日に上場来高値233.47ドルを付けた後に急反落、ちょうど5カ月後の今年1月3日までに高値から39.1%の大幅下落となっている。

米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイの株価は、3日の終値で、前日比5.49%の急落となった。同社はアップルの発行済み株式総数の5.32%を保有する世界第2位の株主だ(1位はバンガードで7.14%)。

同水準に基づくと、バークシャーが保有するアップル株の価値は、9月末時点の576億ドルから360億ドル以下に減少した計算となる。

「アップルは単なる1つの株ではない。波及効果が大きく、アップルが下げれば、他の複数の株が下がる。ファンドはロスカットによる売りに回り、株価が下落。株が下がれば、また売らなければならないという悪循環に陥ろうとしている」とスプリングキャピタル社長の井上哲男氏は指摘する。

<政策対応は歯止めとなるか>

今の相場は、当局の政策対応を待つ「催促相場」とも言われる。実際、市場では「FRB(米連邦準備理事会)が利上げ停止、もしくは利下げに転じれば、マーケットは好感し、下げ相場の転換点になる」(外資系証券ストラテジスト)との見方は少なくない。

実際、米国の長短金利が逆転(逆イールドカーブ)したケースをみてみると、金融政策の転換などで、いったん株価は上昇する場合が多い。

しかし、今回のiPhoneなどの需要減退が、米中貿易戦争を起因としたものならば、金融緩和などの政策対応がどの程度の効果を持つかは不透明だ。

市場では「米中貿易戦争の本質は、覇権争い。これは金融政策が転換しようと、トランプ大統領が交替しようと変わらない。決着がつくまで企業は投資を控えるだろうし、マーケットも上値が重くなるだろう」(外資系証券の営業担当幹部)と、悲観的な見方も増えている。

日本は年間約6兆円とアップルの自社株買いに迫る規模のETF買いを続ける日銀の存在がある。しかし、世界的な景気減速、日本以外の金融緩和転換の可能性と、世界の景気敏感株と位置付けられ、円高に弱い日本株には不利な状況だ。日本時間4日午後3時時点のアジア市場で、一番下げているのは日本株となっている。

ニッセイ基礎研究所・チーフエコノミストの矢嶋康次氏は「世界の耐久財需要が落ちている。政策転換でいったん米株は戻ったとしても、企業業績を回復させるのは難しい。日本株は米長期金利低下による円高で苦しくなるだろう。政策対応の余地は乏しいが、まずは、日銀が強気な景気認識を変える必要があるのではないか」と指摘している。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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