コラム

イデオロギーの看板なき2大政党制へ

2009年05月29日(金)05時10分

 5月28日、民主党の前原誠司副代表はBSフジの番組に出演し、たとえ総選挙で負けても「民主党は絶対に割れない」と述べた。民主党はしばしば自民党並みに分裂していると批判される。だが今回の前原発言は、民主党の結束はそうした見方よりもずっと固いといういい証拠だし、何よりも総選挙後の政界再編はまずありえないことを示している。

 われわれが今、目にしているのは二大政党制と呼ぶべき政治体制への進化の一部だ。エコノミスト誌のウェブサイト内のブログ「アメリカの民主主義」への投稿はこの点で示唆に富んでいる。

 共和・民主両党がそれぞれ首尾一貫した統治哲学をもつことなどどうでもいいのでは問いかけながら、ブログの作者はこうつづっている。


 アメリカの政治制度は長年、安定した2つの政党の独占を保証してきたようなものだ。だが両党の基本的なイデオロギー的枠組みが国民の政治に対する多様な見方を適切に体現していると考えるに足る理由はない。
 両党の政策綱領にしても(中略)、時代とともに大きく変化している。イデオロギー的な内容に見せかけたものを全部取り去って、単に両党を「政党A」と「政党B」とでも呼ぶようにしたらどうだろう?


 政党Aと政党B? まさに日本の政治システムを言い表すのにぴったりの表現ではないか。

■「政党B」として戦えば勝てる?

 民主党はよく「自民党の亜流」だと批判される。だがこれは、自民党には比較対象とされるに足るしっかりしたアイデンティティがあることを示している。自民党は半世紀以上前の保守合同以来、イデオロギー的に異なる勢力の集合体であり続けてきた。多様な意見を受け入れている政党としては、世界一の成功例かもしれない。

 自民党が支持を得てこられた理由は、現実主義の穏健派(言い換えれば利益誘導型)の議員の占める割合が、イデオロギーを重視する人々よりも高かったことだ。つまり他の政党よりもイデオロギー色が薄かったことが幸いした。

 民主党にも自民党同様、一定数のイデオロギー重視派がいる。だが自民党がイデオロギー色の薄いいわば「政党A」であるのと同じように、民主党も「政党B」になることでさらなる支持を集められるかもしれない。

 そうなればもちろん、自民党もA党であることをさらに有権者に売り込まなければならない。だからこそ、過去の選挙では両党とも「改革」を掲げて戦った(かつて自民と民主の候補者のポスターが並んで貼ってあるのを見たことがあるが、どちらのポスターにも改革への意気込みがうたわれていた)。

 今回の選挙では、平均的な市民の不安をより敏感にキャッチできるのはどちらの党か、小泉改革のもたらした結果にどちらが強く異を唱えることができるか、どちらがより優しくて穏やかな改革案を出せるかが争点となるだろう。

 自民党はジョージ・W・ブッシュの側近だったカール・ローブが04年の米大統領選で採った戦略を拝借するはずだ。つまり新型インフルエンザや北朝鮮の核実験といったものを材料に民主党のような実績のない未熟な党を信頼している場合ではないと示唆し、先の見えない世界への有権者の恐怖心に訴えるのだ。

 北朝鮮の核実験のあとの26日、鳩山邦夫総務相は民主党の小沢一郎代表(当時)が2月、在日米軍の整理・縮小を進めて将来的に第七艦隊だけにすべきだと語ったことを引き合いに出し、民主党政権では「国は守れない」と発言した。総選挙までわれわれは、こうした前後の文脈を無視した形での小沢発言の引用を繰り返し聞かされることになるはずだ。

■不安だけでは攻めきれない時代へ

 自民党幹部が小沢発言に繰り返し触れているということは、こうした非常時に民主党を選ぶことの危険性を訴ようとして訴えきれていないことを示しているのかもしれない。実際、民主党は自民党に対してほとんど攻撃材料を与えていない。

 民主党は拉致被害者の救出には自民党と同じくらい熱心だし、中国政府との接触を図る一方で対中批判も行なっている。自前で防衛力を強化することや、北朝鮮への先制攻撃の可能性も排除していない。それでも自民党は、民主党に国防面では無責任で優柔不断で平和主義者だというレッテルを貼ろうとするだろう。

 もし民主党政権への不安をあおるだけでは自民党の勝利はおぼつかないということになれば、そうした不安は最終的に実体を失うことになるだろう。そうなれば民主党にとっても「自民党ではない」というだけで政権交代を狙える時代は終わる。

プロフィール

トバイアス・ハリス

日本政治・東アジア研究者。06年〜07年まで民主党の浅尾慶一郎参院議員の私設秘書を務め、現在マサチューセッツ工科大学博士課程。日本政治や日米関係を中心に、ブログObserving Japanを執筆。ウォールストリート・ジャーナル紙(アジア版)やファー・イースタン・エコノミック・レビュー誌にも寄稿する気鋭の日本政治ウォッチャー。

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