眞子さんと小室圭氏に対する日本人の要求は過酷すぎる。この結婚でジレンマが解決できるわけではない
結婚後の記者会見に臨み、見つめ合う2人(10月26日) NICOLAS DATICHEーPOOLーREUTERS
<眞子さんが「ポニーテールの一般人」と結婚できるなら、皇族も庶民と同じではないか。永遠であるべき日本の国が、なぜこんなにも下世話で凡庸なのか。社会的保守派の不合理な主張だが、根本的な問いでもある>
秋篠宮家の長女・眞子さんと10月26日に結婚した小室圭氏が、9月に3年間のアメリカ生活からポニーテール姿で帰国したとき、多くの日本人が眉をひそめた。将来の義父母と会う際にダークスーツではなく、ピンストライプのスーツを着ていたことにも、ある宮内庁関係者は不満を漏らした。
小室氏と眞子さんが婚約を発表して以来、日本メディアは小室氏の母親が元婚約者から約400万円を借りて返していないと熱心に報じてきた。この「スキャンダル」は小室氏が皇室をだまそうとしている証拠に違いないというわけだ。
国民は当初、小室氏の飾らない人柄に好感を抱いたが、ネガティブ報道の洪水により率直さは粗野さの表れであり、眞子さんとの婚約はペテン師の所業だと、多くの日本人が確信した。眞子さんの父・秋篠宮殿下も、この結婚に不満だったようだ。
眞子さんの結婚に対する国民の懸念の背景には、切ないラブストーリーと国民の自意識を形成する「神話」との避け難い衝突がある。
眞子さんの人生を詳しく知ることで、私たちは気付く。プリンセスといえども、完璧な女神として生きることを義務付けられた不完全な世界で、懸命に愛を見つけようとする若い女性にすぎないことを。
日本の皇室は武士による統治と権力争いが続くなか、長きにわたり日本を統合する儀礼的存在だった。
ただし、天皇の「現人神」としての地位が政治的・社会的に重要な意味を持つようになったのは、第2次大戦前から戦中にかけての軍国主義期であり、天皇の「神性」は軍国主義体制とその政策を日本という国の本質と結び付ける役割を果たした。
日本の皇室を含む君主制は、そして全ての社会的保守派も例外なく実現不可能なジレンマに直面している。眞子さんが不完全な人間界で完璧な女神として生きる義務を負わされているように。
国の本質とは、時を超えた完璧なものだとされている。そのため、眞子さんやその新郎たる小室氏が古来の慣習や考え方に背くことは、国の本質や完璧さから外れ、日本の文化・伝統を体現する存在を汚す行為と受け止められる。
小室氏のポニーテールは単なる「場違い」ではなく、日本の本質を脅かす攻撃なのだ。
眞子さんが「ポニーテールの一般人」と結婚できるなら、皇族も庶民と同じではないか。永遠であるべき日本の国が、なぜこんなにも下世話で凡庸なのか。
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