コラム

「YouTubeですら稼げている」時代、元NewsPicks佐々木紀彦氏は映像メディア立ち上げへ

2021年04月12日(月)11時45分

藤野氏は「『YouTubeですら稼げている』と言ったほうがよい。よりターゲティングして資金投入したら、動画メディアは凄まじく稼げる領域になる」と指摘する。

その一例が、アメリカの定額制動画配信サービス、Netflix(ネットフリックス)だ。Netflixの主な収入源は広告ではなく、契約者が支払う月額料金。契約者が増えるほど利益が上がり、良質なコンテンツが増える。その結果、さらに契約者が増えるという非常に強力なビジネスモデルを確立させた。

なかでも、『愛の不時着』『梨泰院クラス』など、韓国発の大ヒット作品は記憶に新しい。一方、世界で通用する日本作品がまだまだ少ないのはなぜだろうか。

佐々木氏によると、アメリカ(や韓国)のような「ケーブルテレビ局同士の激しい競争」を経験していないことが日本放送界の大きな特徴だという。

「日本では地上波放送が独占的地位を保ってきて、あまり専門チャンネルが発達する余地がなかった。しかし、ネットだとそれが花開く可能性がある。YouTubeにはまだないが、今後はプロ目線のビジネス系コンテンツが求められる時代。なおかつ、若い人の概念を変えられるように、ビジネスを民主化、メジャーコンテンツ化したい」と、佐々木氏は言う。

キーワードは「ビジネスのエンタメ化」。真面目だが楽しくて分かりやすいビジネス系コンテンツ産業には、「確かに大きな穴が空いている」と藤野氏も頷く。

佐々木氏は、「情報が一方通行ではなくなったことで問われるのは、メディアがわざわざ情報発信することの専門性・正当性」だと話す。

「また、テレビ番組中にCMを入れるというビジネスモデルは、元電通社長の吉田秀雄氏が作ったもの。そういった何十年も続くモデルを一から作った人が今の世の中にほとんどいないので、いろいろトライしたい」

世の中にはさまざまなモノやサービスで溢れ返っているが、必ずどこかに「隙間」は存在する。既存の文化に価値を見出し、新たな市場を生み出す挑戦者が求められている。

構成・酒井理恵

●YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

LSEG、第1四半期契約の伸び鈍化も安定予想 MS

ビジネス

独消費者信頼感指数、5月は3カ月連続改善 所得見通

ワールド

バイデン大統領、マイクロンへの補助金発表へ 最大6

ワールド

米国務長官、上海市トップと会談 「公平な競争の場を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story