コラム

投資も消費もせずお金を貯め込む日本は「教育失敗国」

2021年03月26日(金)11時40分
藤野英人

「お金のまなびば!」より

<日本人は投資をしないと言われるが、その結果起こるのは、個人個人が貧しくなるということだけではない。「全員が貯め込んだら世の中は回らない」と、ひふみ投信シリーズのファンドマネージャー・藤野英人氏は指摘する>

ひふみ投信シリーズのファンドマネージャーとして知られる藤野英人氏と、お金や投資、経済について学ぶYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」

今回取り上げる動画は、「【投資のプロが語る】日本人のお金が増えない理由 眠れるタンス預金を動かそう」

第一生命経済研究所の試算によると、個人がお金を金融機関に預けずに自宅で保管する「タンス預金」は、2019年に50兆円を超えた。「タンス預金は新型コロナウイルスの影響でますます増えている。私の予想では、現在は60兆円ほどになっている可能性が高い」と藤野氏は言う(編集部注:3月17日に日銀が発表した「資金循環統計」〔速報〕によると、個人金融資産の「現金」は101兆円と初めて100兆円を超えた)。

なかには、タンスどころか油紙で巻いたお札を大きな壺に入れ、軒下に埋める人も存在するという。

「お金を埋めても、『ジャックと豆の木』のように金のなる木が生えてくるわけではない」

笑い話のようだが、この超低金利時代において、軒下も銀行も大差ないと言えるかもしれない。

日本人の家計金融資産は、欧米の先進国と比べて現金・預金の占める割合が非常に高いのが特徴だ。日本銀行の資料「資金循環の日米欧比較(2020年8月)」によれば、その割合は54.4%。一方、投資(株式等、投資信託、債務証券)に回す金額の割合は14.4%にとどまる。

これに対し、アメリカの現金・預金の割合は13.7%、投資に回す割合は50.8%と、日本とはまるで正反対だ。では、投資にお金を回すと、どのような現象が起こるのか。一言で表すと、「国が元気になる」ということだ。

「海外の場合、設備投資や研究開発にお金をあてるので、社会がどんどん進歩していく。日本人は現金を消費にも投資にも回さず溜め込んでいるだけなので、世の中は動かない。お金を抱いて、貧乏になっていくだけだ」

事実、家計金融資産の伸び率の差は歴然だ。金融庁「平成28事務年度 金融レポート」によれば、過去20年間で日本の家計金融資産が約1.54倍しか伸びていないのに対し、アメリカは約3.32倍、イギリスは約2.46倍も資産を増やした。

他国は年々成長している。しかし、日本の場合はお金が働いていないので、貯金した分しか資産は増えないのだ。

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story