コラム

北の核実験が急がせる日本の核武装

2009年05月25日(月)23時43分

 あなたが日本の首相なら、北朝鮮が核実験を実施し、その威力が長崎原爆並みだと伝えられる現状で何を考えるだろう。

 私の推測では、できるだけ早く日本が核武装する可能性を模索するのではないだろうか。日本の政府関係者は、今年4月に実施された北朝鮮の弾道ミサイル実験でもう十二分に動揺させられていた。

 自民党のタカ派議員たちは、これまで何年も日本の平和憲法に疑問をもち続けてきた。日本は北朝鮮に対する先制攻撃を認められるべきだとも主張している。

 自民党の防衛政策検討小委員会では、「専守防衛の範囲で座して死を待たない防衛政策として敵基地攻撃能力が必要」と強調した。

 今回の核実験はある意味で、これまで北朝鮮に強硬路線を取ってきた麻生太郎首相にとっての、またとない政治的チャンスだ。

 今年9月までに総選挙が行われる日本では、野党第1党の民主党が支持を伸ばし続けている。麻生は今回の事件を逆手にとって、民主党との政策の違いを際立たせようとするに違いない。

 とはいえ日本の核武装は中国を刺激し、台湾にも核保有という夢を再び思い起こさせることにもなりかねない。今はただ、そうならないことを祈ろう。

――ブレイク・ハウンシェル


Reprinted with permission from FP Passport, 26/5/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

UAE大統領、トランプ氏と電話会談 ガザ停戦を協議

ビジネス

2月企業向けサービス価格、前年比3.0%上昇=日銀

ワールド

黒海合意、ロシアの利益と世界の食糧安保のため=外相

ビジネス

米食品大手クローガーとアルバートソンズ、合併破談巡
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 8
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 10
    【クイズ】トランプ大統領の出身大学は?
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story