コラム
東京に住む外国人によるリレーコラムTOKYO EYE
日中の裏の裏を知る歌舞伎町案内人の決断
今週のコラムニスト:李小牧
〔3月11日号掲載〕
歌舞伎町案内人は先月、日本を初めて訪れた中国人学生50人を福島県に「案内」した。中国留学の経験のある日本人学生が企画した「がんばれ福島、がんばれ日中」ツアーに同行したのだ。中国人に被災地の現状を知ってもらうため、私はこれまで何度も同種のツアーに参加してきた。福島県訪問は震災後3回目だ。
今回驚いたのは、福島県産農作物の風評被害の深刻さ。訪れた福島県農業総合センターはもともと農業関係の試験研究機関だったが、今では仕事のかなりの部分が放射線量の測定で占められている。実際、場所によっては福島県内の放射線量は上海より低く、出荷される農作物は安心して食べることができる。ただ、そう受け止めることができない人は今も多い。
実はわが中国人妻もその1人で、福島から持って帰ったイチゴを息子に食べさせようとしたら、「絶対ダメ!」と激怒した(実際に食べさせたら息子は「おいしい」と大喜びだったが)。日本に住んでいてこの状態なのだから、情報の少ない中国ではまだまだ誤解が続いている。このツアーに参加すると両親に報告したら、直前まで反対の電話がかかってきた中国人学生もいたほどだ。
どうすれば海外にまで広がった風評被害をなくせるのか。震災から3年たった今も苦しんでいるのは福島の人たちだけではない。「ポスト石原慎太郎」時代を迎えたわが歌舞伎町にも課題は山積している。日中関係も悪くなるばかりだ──。
前回、このコラムで「中国の公安当局に捕まったら......日本に帰化して選挙権を手に入れ、新宿区議選挙に立候補する」と書いた。その後、歌舞伎町のネオンの下で考えに考えて、ついに決断した。
私、李小牧は近く日本に帰化を申請する。日本人となり、被選挙権を手にしたら、「歌舞伎町公認候補」として新宿区議選に立候補する。最短なら来年だ。
「夜の蝶」の歌舞伎町案内人に選挙活動ができるのか? そんな疑問を持つ人たちに私は言いたい。李小牧は雨の日も雪の日も街頭に立ってきた男だ。演説のため街頭に立つのは、自分の原点に戻ることにほかならない。
■共産党のスパイにはなれない
私が帰化したら、どこかの政党が落下傘候補として国会議員にならないか、と持ち掛けてくるかもしれない。ただ、私は歌舞伎町でティッシュ配りから日本の人生を始めた。仮にステップアップするとしても、まず新宿区議として実績を積み、次は東京都議、そして最後は国会議員を目指す。それが私のやり方だ。
目標とするのは、フィンランド出身で日本に帰化し、町議から参院議員になったツルネン・マルテイ氏だ。マルテイ氏が町議になったのが52歳、参院議員になったのは61歳のとき。私は今年54歳だから、年齢的にはそう遠くない。そもそも85歳で都知事選に出るドクター中松を見れば、何も怖いものはない。スッポンスープを飲んで精力を維持している私なら、90歳でも十分選挙戦を戦える。
中国と日本の裏の裏まで知り尽くした私は、きっと日本の役に立つだろう。中国大陸出身の日本の政治家はこれまで誕生していない。「共産党のスパイになるのでは」と心配する人がいるかもしれないが、安心してほしい。新宿区議や都議では国家機密を知りようがないし、国会議員になったとしても、日本には特定秘密保護法があるではないか!
新宿区議に立候補したら、まずは「歌舞伎町24時間化」を公約として掲げたい。それが実現された後にも、東京や日本、日中関係には解決すべき課題が山のように残されている。政治家としてこういった難題に取り組める──新たな挑戦に向け、歌舞伎町案内人の胸は希望と期待でいっぱいだ。
まずは家庭内野党との交渉が最優先課題なのだが。
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