コラム
東京に住む外国人によるリレーコラムTOKYO EYE
歌舞伎町ラスベガス化作戦
今週のコラムニスト:李小牧
本ウェブサイトの人気記事を順位づけする「ウィークリーランキング」コーナーを見ていて、おもしろいことに気づいた。上位に来やすいのは韓国か中国の悪口か(笑)、日本人をほめそやす記事。一時、「世界が尊敬する日本人」に関連する記事が何本もトップ10入りしていた。
不景気で再び自信をなくしつつある日本人にそんなに励ましが必要なら、私も「李小牧が尊敬する日本人」を発表させていただこう。堂々の第1位は石原慎太郎都知事である。意外に思う人もいるかもしれないが、理由は簡単。彼が04年に始めた歌舞伎町浄化作戦で、この町が安全な歓楽街に変わったからだ。
「ヤクザと風俗の町」だった歌舞伎町は、石原知事の登場で劇的に変化した。今では名物だったヤクザの「パレード」は見られないし、悪質なキャッチやぼったくり店もほとんど姿を消した。ただ、歌舞伎町が新たな街のビジョンを描けているか、と聞かれれば答えは「不(ノー)」である。
去年の暮れに閉鎖された新宿コマ劇場の跡地利用はまだ決まっていないし、コマ劇前につくられたシネシティ広場も、イベントがあるときはいいが、ないときはホームレスの憩いの場になっている。05年に繁華街の再生を目指す町の憲法として歌舞伎町ルネッサンス憲章をつくったが、集客面ではまだ何もできていない。町の新たな核が見つからないのだ。
■連日連夜のショーで客寄せ
アイデアがないと嘆いていてもコトは前に進まない。ヒントはある。10年ほど前、初めて旅行でアメリカ・ラスベガスに行ったとき、その町のつくりに驚かされた。町の中心は確かにギャンブル施設だが、その周囲を無料でショーを見られる施設が取り囲んでいて、家族で町を楽しめる仕組みになっていた。
この考え方を歌舞伎町に当てはめてはどうだろう。1カ月に1回でなく、毎日広場で無料ショーを企画する。歌舞伎町は夜の町だから、ショーは昼ではなく夜にやる。歌舞伎町のアジアでの知名度を生かせば、中国や韓国のスターを呼ぶことも不可能ではない。ジャッキー・チェンがステージに立つだけで、どれだけ集客効果があることか。
日本全国の祭りを日替わりで歌舞伎町に招待する、という手もある。招待される側にとってもこれ以上の宣伝はない。祭りのエネルギーは必ず町に人を呼び寄せるし、集まった客の財布のヒモもつい緩くなるはずだ。
■歌舞伎町を変えるのは......
歌舞伎町がホンモノの「歌」と「舞」の町になる、というのがこのアイデアのミソである。ちなみに、個人的にはコマ劇跡地にはエンターテイメントを見ながら食事できるレストランをつくってはどうか、と考えている。中国人観光客を案内するとき、50人が一回で入れる日本料理店がなくて困ることがあるが、コマ劇跡地なら200人から300人を収容できる施設をつくることもできる。
中国人が無責任なことを言っている、と思わないでほしい。歌舞伎町に関わる皆さんが頭を悩ます気持ちはよく分かる。日本に21年住んだ今も、日本人の互いに協力し合う姿勢やボランティア精神には感心させられる。ただ、難題に直面すると日本人はなぜかとたんに消極的になってしまうことがある。
ここは一つ、「歌舞伎町人」である李小牧に任せてもらえないだろうか。これだけの大きなショーを連日実現するにはカネだけでなく、困難を押しのけるブルドーザーのような人間が必要になる。中国マフィアや日本ヤクザに揉まれてきた私が、難局にめっぽう強いのはみなさん承知の通りだ。
手始めに簡単に出来る改革を提案しよう。呼びにくいシネシティ広場をもっと分かりやすい名前、あるいは単に歌舞伎町広場と改名する。それだけでイメージがずいぶん違うはずである。
報酬はいらない。ただ一連の改革が成功したあかつきには、天安門広場ならぬ歌舞伎町広場に「歌舞伎町の毛沢東」李小牧の肖像をかけてもらえればそれでいい(笑)。
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