コラム

グーグルタブレットはiPadより優れモノになる

2012年04月10日(火)18時35分

 グーグルが自社ブランドのタブレットを売り出すという。いろいろな噂を総合すると、サイズは7インチ型。9.7インチのアップルよりもぐっと小型で、片手で持てるキンドル・ファイアと同じ大きさである。製造を請け負っているのは台湾のアスーステック・コンピューター(ASUS)。OSはもちろんアンドロイドで、WiFiモデルのみ。価格は今、249ドルを199ドルに引き下げる努力をしている最中とか。
 
 グーグルが独自のハードウエア製品を作った例としては、2010年初頭に発売した「ネクサス・ワン」というアンドロイド・フォンがある。グーグルには得意分野と不得意分野というのがあって、ハードウエア製品を売るのはグーグルの代表的不得意分野のひとつだ。性能は優れているかもしれないが、機能の表現のしかた、実現の方法が上手でなく、何となくこなれていない。販売もオンラインだけで、触って試すことができず、親切なカスタマー・サービスもいない。当時、困ったユーザーたちはオンライン上に集って、互いに助け合ったりしていたものだ。
 
 ネクサス・ワンはそれほどのヒットにもならず、その後何となく先細りに。継続モデルが出たものの、ユーザーたちの熱も少し冷めてしまっていた。そんな記憶があるので、グーグルがタブレットを作ると聞くと、どうしてもあの二の舞を想像してしまう。

 だが、あれから時代もグーグルもちょっと変わった。まずグーグルは、たいそうデザイン意識の高い企業になった。グーグル・プラスなど、最近発表されたサービスの使い勝手は、以前と比べものにならないほど洗練されている。

 それに注目すべきは、クラウドが本格的になっていることである。グーグルも自社のクラウド・サービスを「グーグル・プレイ」として整理し直して発表した。日本ではまだ本格的にはスタートしていないようだが、グーグル・プレイはすべてのメディア・コンテンツをクラウドに保存し、そこからいつでもどこでも、どんな機器からでも自在に引き出して利用するというモデルだ。グーグルのタブレットは、間違いなくこのクラウドの入り口として位置づけられているはずである。

 クラウド上にあるのは、ビデオ、映画、書籍、雑誌、音楽。そうしたものを、このタブレットを使えば、すぐさま視聴できる。アマゾンやアップルにも同様のクラウド・サービスはあるが、今のところ、すべてのタイプのメディアを1カ所に統合し、しかも利用が無料なのはグーグルだけ。最も使いやすく、最もきれいにまとまっている。これからの課題は、コンテンツの充実だろう。これもグーグルの不得意分野のひとつだ。

 ただ、私はけっこう期待している。というのも、考えてみればあのネクサス・ワンにはグーグル社内の技術の粋を集めた機能が揃っていたからだ。音声でしっかり道案内をしたり、音声をテキストに変換したりといった高度な機能を小さなスマートフォンに込めたのは、あれが最初だった。多分、グーグルのタブレットも、現在進んでいるグーグルの開発が伺えるものになるはずだ。

 それに、タブレットはそれぞれの会社の人格のようなものが表現されていて、おもしろくなってきた。アップルは美しいハードウエア製品に、スマートな方法でメディア・コンテンツを提供する。けれどもこの楽園は孤立していて、ちょっと堅苦しい。アマゾンのキンドル・ファイアは、オンライン店舗からいろいろ買ってもらうための道具。だからショッピングやメディア消費は楽々にできるが、さて文書を作成しようと思ってもできない。

 さて、グーグルはどうか。グーグルならば、ただのメディア消費でもショッピングでもなく、テクノロジー・ツールとしてクラウドとつながる未来的な方法を見せてくれるのではないかと思うのだ。

プロフィール

瀧口範子

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』、『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち: 認知科学からのアプローチ(テリー・ウィノグラード編著)』などがある。

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