コラム

アジア初グーグルキャンパスがソウルに登場、スタートアップ支援で社会が変わった?

2015年11月02日(月)11時57分

 韓国でスタートアップを支援しているのはグーグルキャンパスだけではない。韓国政府も投資を惜しまないでいる。もちろん、スタートアップを支援する背景には深刻な就職難がある。それ以上に、大手企業に入社できても「38度線(38歳で部長クラスにならないとクビになる)」、「五六島(56歳まで会社に残る人は給料泥棒、釜山にある地名だが発音が同じなのでこう言う)」と呼ばれ不安な日々を過ごすよりは、自分の仕事がしたいという挑戦的な若者も増えている。

 グーグルキャンパスソウルのようなインキュベーションと人が集まって仕事もできるカフェを併設している施設は全国に数えきれないほどたくさんある。その中でも有名なのは、政府系の施設で「コンテンツコリアラボ」、「K-ICTデバイスラボ」、「スマートコンテンツセンター」、「創造経済革新センター」いうところがある。ここではアイデアさえ良ければ、技術開発や試作品作りを政府が派遣した専門家が助けてくれる。ほぼ無料でビジネスを始められるようサポートしてくれるのだ。アイデアさえいいものがあれば、政府がおんぶにだっこでスタートアップさせてくれる。

 それでもグーグルは「グローバル」という切り口で韓国の若者を魅了した。米国に拠点を置き世界中で影響力を持つグーグルならではの国際的なイベントも魅力的だし、グーグルと接点を持つことで、いいものを作ればグーグルに買収してもらえるチャンスもある。

 それに最近の韓国の若者は、英語も第2外国語もペラペラの人が多く、韓国の中だけで仕事するのはもったいない。取材で出会ったスタートアップの青年らは、ほとんどが起業は韓国でするが、いずれは他のアジアの国や、米国、ヨーロッパ、中東、アフリカなどに進出するという目標を持っていた。人材がどんどん海外に出ていくことを懸念する人もいるが、ネットワークでつながった今の世の中に国境はあまり意味がないかもしれない。若い人にはもっと自由に羽ばたいて活躍することを期待したい。

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

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