大学進学のための学業はもちろん大切だ。その後の就職も重要だろう。しかし、イギリスではどのパブリック・スクールも学業の成績だけではなく、学校生活の中で子供が幸せであるかどうかを重視している。その理由は「幸せな子どもは成功する確率が高く、勉強もよくできる」からだそうだ。
幸福感は、日々の生活の中で育っていく。生徒を幸福へと導くにも、また、個々の生徒の隠れた才能や能力を見いだし、優れたところを伸ばすにも、教員の精神的・時間的余裕が必要となる。
現在、日本は少子化傾向にある。だからこそ、これを好機と捉え、余剰教員を減らすのではなく、教員増強に遣うべきではないかとも考えられないだろうか。
他人を思いやる心をもちながら、既成概念や先入観にとらわれずに、自らを信じ、自分の足でしっかりと立つことのできる、幸せな生徒が、日本の学校で育っていくことを願っている。
秦 由美子(Yumiko Hada)
オックスフォード大学で修士号,東京大学で博士号を取得。大阪大学,広島大学、同志社女子大学(表象文化学部・英語英文学科)教授を経て、現在ビューティー&ウェルネス専門職大学・教授。英国サセックス大学・アソシエイト・フェロー、モナッシュ大学・外部評価委員。著書に『イギリスの大学──対位線の転位による質的転換』(東信堂)、『映画で読み解く イギリスの名門校──エリートを育てる思想・教育・マナー』(光文社新書)、『パブリック・スクールと日本の名門』(平凡社新書)、Cross-cultural studies: Newest developments in Japan and the UK(World Pacific Publishing Co)他。
※本書は2012年度サントリー文化財団「人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成」の成果書籍です。
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秦 由美子[著]
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