研究と同じくらい毎日短歌のことを考えて、新人賞に応募して、時には論文のリジェクトと賞の落選の知らせが同時に来て落ち込んだりして、それでも強力な馬力で突き進んでいく......というまでの勇気は、まだ私にはない。それを何十年にもわたって行ってきた永田や坂井は、とんでもない胆力の持ち主だと思う。
一方で物事は結局、どこかの時点で全身全霊をかけるつもりで打ち込まなければ、真に上達することはないのではないか、とも思っている。
実際、Twitter(現X)などで短歌を投稿し始めたのを見ていた人が、瞬く間に結社やオンラインの場で頭角を表し、新人賞を獲って第一歌集を出したりしているのを見ると、この熱量にはかなわないな、と思う。
結局私はまだ、本当の意味で短歌に出会ってはいないのかもしれない。
向山直佑(Naosuke Mukoyama)
1992年大阪府生まれ。オックスフォード大学政治国際関係学部にて博士号(DPhil in International Relations)を取得。ケンブリッジ大学政治国際関係学部ポストドクトラルフェローを経て、現職。専門は国際関係論、特に国家形成と天然資源をめぐる政治を主に研究しており、2024年に博士論文を基にした単著Fueling SovereigntyをCambridge University Pressから出版予定。日本国際政治学会奨励賞、石橋湛山新人賞など受賞。「資源と脱植民地化:産油地域の単独独立に着目して」にて、サントリー文化財団2017年度「若手研究者のためのチャレンジ研究助成」に採択。
『短歌を詠む科学者たち』
松村由利子[著]
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