サントリー文化財団の企画、「超えるのではなく辿る、二つの文化」で一緒に学問の探究をしている、三谷宗一郎(甲南大学准教授)の研究のメインは、現在の日本の医療制度が、戦後、どのような意思決定を経て作られたものかを探るものである。
三谷の研究は、資料が残りにくい過去の出来事を扱っているため、その資料を探し出すというところから苦労があるとのことだった。当時は資料が世間に公開されるという時代でもなく、多くの貴重な資料が官僚OBの自宅に眠っているケースが多いという。
一方、そのような資料が古本屋に出品された場合、全国の古本屋が入荷情報を登録しているインターネットサイトで情報が出回るらしく、こまめにチェックしておけば、運良く手に入れられるらしい。このシステムは、同じく研究メンバーの櫻井悟史(滋賀県立大学准教授)も利用していると話していたので、資料が重要な分野では大変革命的だったに違いない。
三谷の研究資料は冊子にとどまらない。文書としても記録が残っていない場合は、関係者に直接インタビューすることで情報を得るとのことだった。
当時はまだ個人情報の保護という感覚がなく、官僚名簿も住所まで掲載されているため、医療制度に関わっていた官僚の住所に手紙を送りコンタクトをとることから始め、話をしてもらえるに至るまで、慎重に人間関係を作り上げる必要があると、三谷は話していた。
人から情報を引き出す技術はいろいろあるということだったが、いかにその技術があったとしても、その研究者自身が人と信頼関係を築ける人間性がなければ、かなり研究が難しいと感じた。
それはおそらく才能と呼ばれるものである。もしこの過程を私がおこなっても、舐められて門前払いされていることは容易に想像できるし、どれだけ努力してもできるようになるとは思えない。
また、三谷は、ある政治家がどの団体と繋がりが深いかという研究テーマも同時におこなっており、団体や個人のブログやSNSに載っているパーティーの様子を写した写真で、どの人物がいるかを特定することで関係性を把握するらしい。
現在はマスクをしている、真正面からではない顔ぶれからも特定できることに驚愕した。人間の顔識別が苦手な私には、やはり無理である。私が専門としているアリなら区別がつくけど......。
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