metamorworks-iStock
「三方よし」といえば、近江商人を思い出す。「売り手よし・買い手よし・世間よし」は日本の近江商人の最重要な経営理念だと言われている。
しかし日本の多くの長寿企業を訪問調査した筆者から言えば、「三方よし」は近江商人と限らず、ほとんどの長寿企業が実践している経営哲学なのである。
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが発生、ロシアによるウクライナ侵攻など世界が深刻な危機に直面するなか、改めて脚光を浴びているのは、日本国内に数多く存在する長寿企業に他ならない。
これまでにも日本の長寿企業は事業承継や人材育成、ブランド価値創造、ソーシャルビジネスなどの文脈で度々注目されてきた。
しかし様々な出来事がもたらした危機的状況のなかで特に注目を集めるポイントは、やはり長期にわたって様々な危機を乗り越えてきた長寿企業ならではの危機対応力、ひいては「持続可能な経営」のあり方にあるといえよう。
100年を超える歴史を有している長寿企業ならば、数多くの危機や苦難を乗り越えてきたからである。
筆者は常に1つの疑問を持っている。それは日本には世界最多の長寿企業(その大半は家族企業)が存続しているが、なぜか中国や韓国ではその数が少ないということだ。
同じ東アジアの国である日中韓では儒教や仏教など共通した文化基盤を有しており、社会のさまざまな側面において認識や慣行には多くの共通点もあるが、確かに相違点も多い。
家族や家族企業、企業経営などへの認識・考え方についても「似て非なる」のところが多く存在している。
果たして東アジアにおいて、なぜ日本にだけ、長寿企業が多く存在しているのか。この日中韓3カ国の「似て非なる」の中に、日本企業の長寿の秘密があるのではないか、と。
vol.100
毎年春・秋発行絶賛発売中
絶賛発売中