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論壇誌「アステイオン」97号の特集「ウクライナ戦争――世界の視点から」は、国内外の専門家からウクライナ戦争に関する論考を集めた。同特集をテーマに、12月に行われた廣瀬陽子・慶應義塾大学教授、山口昇・国際大学教授、中西寛・京都大学教授による座談会より。
中西 『アステイオン』97号の特集「ウクライナ戦争――世界の視点から」の責任編集者として次の2点を意図して企画しました。まずは情勢分析的なものは扱わずに、理論的、歴史的な側面など多様な角度から、時間的に長持ちするような分析をするという点。そして、もう1つは、海外の専門家に日本の読者を想定した形で寄稿をお願いするという点です。
廣瀬先生にも「プーチンはなぜ予想外の戦争を始めたか」という論考をご寄稿頂きましたが、本特集についてのご感想をお話しいただけますでしょうか?
廣瀬 特に興味深いと思ったのが、ウクライナ出身のアンドリー・ポルトノフさんによる論考「ウクライナの抵抗力の源泉──プーチンの理解を超えた多様性の力」です。
大きく見ると同感ですが、細かいところで感覚がいろいろと違います。私はウクライナとロシアの間での認識の違いがどんどん広がることによって、今回の戦争につながっていった可能性が高いと見ています。しかし、そういう意識がウクライナ人にはないことをこの論文を読んで改めて感じました。
中西 「ウクライナ人にはない意識」とは、具体的にはどういうことでしょうか?
廣瀬 まず、「カラー革命」の捉え方について、ウクライナ人とロシア人の間に差異がかなりあることです。
2004年の「オレンジ革命」にしても、2013年から14年にかけての「ユーロマイダン革命」にしても、ウクライナ側では「自分たちで起こした民主革命」という位置づけがなされています。しかしロシア側から見ると「欧米が関与してロシアの影響圏に手を突っ込み、かき回した混乱」という位置づけになっています。
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