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※第1回:地政学的出来事を予測できなかった政治学は学問的危機に陥っているのか──ウクライナ戦争が提起する5つの論点(上)より続く
国際関係論の歩みの中で大きな間違いの1つは、ほとんど完全に個人の性格を無視したことだ。これについて責任があるのは、1つの学派だけではない。
「構造的リアリズム」は、重要なのは国力だけで、いったん国力の分布が分かれば、国際システムのふるまいについても理解できるだろうと主張した。
マルクス主義は階級だけが重要で、本当のところ重要なのは経済的階級の特殊利害と、その力が分かれば、歴史がどのように展開するのか必要なことはすべて理解できると言ってきた。
コンストラクティビストは、重要なのはエージェントと構造の相互作用であり、ひとたび適切な社会学的動態が分かれば、世界秩序の進化について必要なことはすべて理解できると語ってきた。
以上のような見方には、いずれも個人の性格という変数が果たす余地はない。もっともコンストラクティビストには若干例外的な部分もあり、彼らも、アレクサンダー大王とか、チンギスカンとかナポレオンのような影響力の大きな個人が、まれには構造に大きな影響を及ぼすことを認めるかもしれない。
どんなロシアの指導者でも、2022年2月24日にウクライナに侵攻しただろうという想像には、説得力があるだろうか?
ミハエル・ゴルバチョフやボリス・エリツィン、あるいはアレクシー・ナヴァルヌイ(もしロシアで自由で公正な選挙が行われていたなら、今頃彼が大統領になっていたかもしれない)のような人物ならそうするだろうか?
私にはそうは思えない。今回の戦争は、ウラジーミル・プーチンによる戦争だ。なぜこの戦争が起こり、それがどのように展開しそうかを理解するには、ウラジーミル・プーチンという個人について理解しなければならない。
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