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経済学

チケットやゲーム機の高額転売は本当に悪いことなのか?──「需要法則」からの接近(下)

2022年11月10日(木)08時01分
安田洋祐(大阪大学大学院経済学研究科教授)

もちろん、転売屋が儲けていた分(や転売を行うための諸々のコスト)が売り手の利益となるので、全体の効率性が高まるというメリットはある。ただ、売り手が当初意図していたであろう、「手頃な価格で商品を買い手に届けたい」という目的は達成することができない。これを多少なりとも実現するためには、世論が訴えるように法律やルールで転売屋の排除を進める方が効果的だろう。

問1と問2についてまとめると、「転売」を完全に無くすためには経済学者が提案する十分な値上げは確かに優れている。他方で、「高額」な状況を少しでも改善してできるだけ多くの買い手が定価購入できるようにするためには、世論が推すように営利目的の転売行為を禁止する方が望ましい。

ただし、後者の場合、転売の抜け道を完全に塞ぐことができなければ、依然として一定程度の高額転売は行われてしまう。その際には、定価をある程度上げて転売から得られる儲けを小さくすることで、転売屋の参入をできるだけ抑える、という両者のハイブリッド的な対処も考えられるだろう。

このように、目的と状況に応じて、世論と経済学者の答えを組み合わせながら実行していくのが筋が良い解決法ではないだろうか。

転売行為自体の意義についても、世論と経済学者では見方が分かれる。この点に関する問3の答えはどちらが正しいのだろうか。筆者は、経済学者ではなく世論の見方が正しいと考えている。

高額転売が起きているような商品については、転売は社会の役に立たないのである。こう言ってしまうと、本特集のテーマである「経済学の常識」に反する異端的な主張に聞こえるかもしれない。誤解を避けるために、以下でその理由についてやや詳しく述べておこう。

最初に抑えておくべき点として、転売には次の2種類がある。


1. (生産者→)消費者A→消費者B
2. (生産者→)転売屋→消費者C


1の転売は、商品に対する価値を低いと見なす消費者Aからより高いと見なすBへとアイテムが移転するため(そうでないとそもそも売買が成立しない点に注意)、これは付加価値を生み出していると解釈することができる。

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