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※第2回:「協調性」は日本人男性のみに通用するという研究結果──非認知能力の重要性(中) より続く
デミング教授は、O*NETと呼ばれるアメリカの労働者を対象とした調査のデータを用いて、1980年代後半から1990年代と、2000年代を比較すると、2000年代の方が高い社会スキルを必要とする仕事が12%ポイント増加したのに対し、高い認知能力を必要とするが、低い社会スキルでよいという仕事は3%ポイント低下したことを示している(*3)。
そして、もっとも雇用と賃金の伸びが高かったのは高い認知能力と高い社会スキルの両方を必要とする仕事だった。つまり、高給取りになろうと思うと、社会スキルは不可欠だということになる。社会スキルは自動化や機械化が困難だからだろう。
デミング教授は、社会スキルの価値が高まる理由について、社会スキルの高い人がいると、会社全体の調整や交渉にかかるコストを削減することができ、各々の労働者が専門性を高めて効率的に働くことを可能にするからであると解釈している。
また、デミング教授の別の研究では、社会スキルの高い人は「チームプレーヤー」としての資質に富み、チームプレーヤーはチーム全体の生産性を向上させるということが明らかになっている[Weidmann and Deming, 2020]。
デミング教授の研究によると、チームプレーヤーはチームメイトをうまくやる気にさせて、努力を引き出すことに長けているということがわかっている。チームワークが必要とされる職場環境ほど、社会スキルが高く評価されるといってよいだろう。
ここまでで、非認知能力の重要性は十分にご理解いただけたと思う。そうすると、次に私たちが知りたくなるのは、「非認知能力をどうやって育てればいいのか」ということだ。既にこれまでの研究により、幼少期の非認知能力には可鍛性(=鍛えて伸ばすことができる)があり、家庭や学校で育てられることを示唆する研究は存在していた。
また、最近の新しい流れは、学校教育の中で、明確に教育上の目標として非認知能力の育成を掲げ、非認知能力を育てる教育プログラムが開発されるようになってきたということだ。そうしたプログラムの効果を検証していることで有名な経済学者がイギリスのエセックス大学のスール・アラン教授だ。彼女の研究グループは、教室の中で忍耐力ややり抜く力、好奇心などの非認知能力を育てるプログラムについて調べた。
ここでは、アラン教授らの研究から明らかになったことをかいつまんで紹介したいと思う。アラン教授の優れた研究業績の1つは経済学では最高峰の学術雑誌の1つであるQuarterly Journal of Economicsに2019年に発表された新しい論文だ。アラン教授らのチームは、将来の学力を予測する、子供たちの「やり抜く力」(GRITとも呼ばれる)に注目した。
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