学問の面白さを味わうためには想像力は必須だ。現代の人文学と社会科学に求められているのは、数学を学問の「王者」と考えたデカルトに額ずくのではなく、文学(神話)や歴史を学ぶことの重要性と、記憶力と想像力の大切さを説いたヴィーコの学問論をもう一度振り返ることではなかろうか。そのためにも、サントリー学芸賞が果たす役割と、将来の学芸(学問と芸術)に与える影響力は決して小さくはない。言い換えれば、優れた作品をものした執筆者を既存の基準で「見つける」だけでなく、選考にあたっては想像力の豊かそうな若い研究者を「育てる」という意識がさらに求められるということだろう。
*『サントリー学芸賞選評集』は下記サントリー文化財団Webサイト内にてe-pub形式でご覧いただけます。
https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_ssah/list.html
猪木 武徳(いのき たけのり)
大阪大学名誉教授
vol.101
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