受賞をきっかけに筆者はアカデミズムとジャーナリズムの総合を自信をもって目指すようになり、『核論』『戦争報道』『NHK問題』などの一連の仕事をこなしてきた。ジャーナリズムはただ報じるだけでなく、学術的な検証や考察に接続できる品質を持つべきだ。アカデミズムとジャーナリズムが排他的に二分されるのではなく、その間にアカデミック・ジャーナリズム、ジャーナリスティック・アカデミズムの豊かな活動があるべきだと筆者は考えている。そんな筆者にとって『光の教会 安藤忠雄の現場』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した平松剛氏が『磯崎新の「都庁」』ではサントリー学芸賞を受賞したことも我が事のように嬉しかった。筆者の当初の思い込みが間違っていたのだ。サントリー学芸賞はアカデミック・ジャーナリズムの活動を支持してくれている。ジャーナリズムの賞は多々あるが、サントリー学芸賞のジャーナリズムに対する姿勢は独特であり、とても貴重であると思っている。
*『サントリー学芸賞選評集』は下記サントリー文化財団Webサイト内にてe-pub形式でご覧いただけます。
https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_ssah/list.html
武田 徹(たけだ とおる)
評論家
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